『国文学研究史』 丸山 茂著 2008年3月8日・新風舎発行 B6判・128頁・定価1250円+税 目 次 序 章 「国文学研究史」とは何か I 「国文学研究史」の歩み 8 U 研究史の課題と対象 13 V 研究史の時代区分 15 第一章 研究萌芽時代 I 和歌四式 19 U 『古今集』仮名序と『新撰髄脳』 21 V 『万葉集』の訓読と『能因歌枕』 23 第二章 作歌学時代 I 歌論・歌学 30 源俊頼/藤原範兼 U 六条家の歌学 34 藤原顕輔/藤原清輔/藤原顕昭 V 御子左家の歌学 43 藤原俊成/藤原定家 W 俊成・定家時代のその他の歌学 50 藤原教長と後鳥羽院/順徳院/鴨長明 V 物語研究の興隆 54 物語研究前史/源氏物語研究/伊勢物語研究 Y 古今伝授と歌論・歌学 65 三家分立/東常縁から宗祗への古今伝授 二条家流の歌論・歌学/京極家流の歌論・歌学 冷泉家流の歌論・歌学 第三章 古典学時代 I 新時代の機運 78 幽斎と長嘯子/対照的な師弟/茂睡と春満、その他 U 国学者による国文学研究 80 V 前期国学者による古典研究 82 ゛ 下河辺長流/戸田茂睡/契沖/荷田春満 賀茂真淵/本居宣長/真淵との出会いと古事記研究 宣長の他の著作と業績/古事記伝と源氏物語玉の小櫛 W 官長学の継承 100 実子春庭、養子大平、平田篤胤、伴信友など/宣長と同時代の国 学者による国文学研究/古典学者 第四章 近代国文学の成立 I 宣長学派から近代国文学(日本文献学)へ 108 東京帝国大学国文学講座の成立/芳賀矢一の日本文献学 佐佐木信綱の文献学/書誌学/本文批判/校本を作るには/ 注釈学/注釈と解釈/文献学的研究と文学史的研究及び文学批評 的研究 U 新しい研究法の形成 122 あとがき 126 ………………………………………………………………………………… あ と が き 主人(丸山茂)が亡くなって、もう十年になります。 家の中には、研究室から引きあげてきた蔵書やら、授業で使ったノート、 プリントのたぐいが山のように積みあげられたままです。 ある日、ぼんやりと、その中の一枚のプリントを眺めていました。奇麗 な、やさしさがにじみでている主人の字です……。それを目で追っていく と、教えることに情熱をもっていた夫の息づかいが伝わってくるようで、 どんどん引きこまれていきました。 「わかりやすいし、おもしろいじゃない……」 そういえば思い出しました。もう三十年も前の話です。 「研究史を出したいな」 まるで少年のように目を輝かせ、その構想を語っていました。 二十年間、研究史を出すことを思い続けて授業をしていたのでしょうか。 プリントを見ただけで、本としての形ができていると感じました。私は思い ました。これはもしかしたら出版できるのではないかと……。 もとが講義用のノートですので、肉付けは講義時につけていたわけで、いわ ば骨組みだけの本ですが、それゆえに非常にわかりやすく、日本の研究史の 流れがよく見え、興味を感じさせるものとなっていると思います。現在は、 パソコンで検索すれば知りたいものを瞬時に知ることができる時代となりま したが、一冊の本として、全体像を鳥瞰して見るのも意義のあることではな いでしょうか。 推敲に推敲を重ね、完全なものにしようとする主人でしたので、平成の項 目もなく、さらには引用した参考文献も十分お示しできない、いわば草稿本 のまま、本として出版することを主人が喜ぶかどうか、自信がありません。 でも、この本を手にした方のお一人でも、日本文学に興味を持ち、お一人に でも研究の役に立つことができれば、幸いに思います。 最後になりましたが、主人に代わりまして、学恩を賜りました皆様に深く 感謝申し上げます。 また、出版に至るまでお力添えをいただきました新風合のスタッフの方々に 厚く御礼申し上げます。 二〇〇七年十二月十二日 丸山優子 …………………………………………………………………………………… ■ 著者プロフィール 丸山茂(まるやま・しげる) 1931年新潟県十日町市に生まれる。 法政大学文学部日本文学科卒業後、同大学院人文科学研究科日本文学専攻修 士課程修了、博士課程単位取得満期退学。 文学博士。 国文学研究資料館調査員、弘前学院大学教授・学務部長、 盛岡大学文学部教授・同部長などを歴任。 98年逝去、享年66歳。 [おもな著書] 『春水人情本の研究』桜楓社 『春水人情本と近代小説』新典社 『芭蕉と奥の細道論』新典社 ……………………………………………………………………………………… ……………………………………………………………………………………… 丸山茂先生は、法政大学の先輩である。重友毅先生の主宰されていた日本 文学研究会の常任委員であり、私は学部の頃から御指導頂いた。学部4年の 時、重友先生から、上田秋成研究会で発表しないか、というお言葉を頂き、 早速、「吉備津の釜」試論の草稿を提出したところ、丸山先生が査読して下 さり、その結果を重友先生から伺った。評価は厳しいものであり、結局、発 表は中止となったが、この一件は、私の研究への扉を開いてくれる出来事と なった。 日本文学研究会の例会は、午前中演習、午後各自の研究発表であったが、 丸山先生には、この例会でも多くの御指導を頂いた。 さらに、昭和女子大学へ勤務する時には、清水正男先生を介して、丸山先 生の大学院時代のノートを閲覧させて頂いたことがある。奥様が「あとがき」 で「奇麗な、やさしさがにじみでている主人の字です……。」と述べられて いるように、重友ゼミの内容が実に丁寧に、記録されていた。 本書を拝読すると、丸山先生が弘前大学・盛岡大学で講義されている様子 が目に浮かぶようである。66歳という早すぎる先生の御他界は、誠に残念 であるが、本書の刊行を丸山先生は、きっと喜んでおられることと思う。 深沢秋男