薄物都々逸研究

菊池真一

 三田村鳶魚は『瓦版のはやり唄』(春陽堂。大正十五年)において五十七種類の流行唄を翻刻した。その中に都々逸が五種類含まれている。
 荻田清氏は「上方の噺家と天保・幕末期の流行唄[上]―薄物の唄本より―」(『芸能史研究』九二号(一九八六年一月)において、数丁の小冊子を「薄物の唄本」「薄物唄本」と呼んだ。北川博子氏は、これに従い、『阪急学園池田文庫所蔵 薄物唄本目録』(一九九三年十一月)を編んだ。
 ここでは、都々逸本のうち、共表紙の数丁のものを「薄物都々逸」として扱う。以下、菊池蔵の薄物都々逸本を翻刻紹介する。いろは物とその他とを分け、それぞれ題名の五十音順に紹介する。(いろは物は末尾に紹介する)振り仮名は省略。清濁は原本のまま。文句入りの部分は〔  〕に括った。都々逸以外のものが交じっている場合がある。

   一 東形恋の道連於津奈都々一
東形恋の道連於津奈都々一 上
馬喰町三丁目 吉田屋小吉版」(一オ)
▲夜風しのびてあのまどしたを〔そばう/\/\正月やしるこでござい〕おでんかん酒寒さ忍びてよしずばりけあさ口に〔雪折笹に村雀おやどはどこじやとあてもない〕
▲なんとしたふかいかたきのあくえんじややら〔(しん内 明からす)そなたもともにと言たいがいとしそなたを手に懸て〕どこへわかれていかりやうか」(一ウ)
▲あゆみやらずにふと立止り〔(上るり かゞみ山)アヽ気にかゝる/\辻うらの今のはなしからすなきの此わるさアレ/\/\けしからぬ胸さはぎはコリヤお宿へ行れぬはいのやうすはしるゝこの文ばこ〕ふうもおしきるしやうおもひ
▲なにはぢに主はすみなれ身は東路にやぶれしやうじがかみこひし」(二オ)
▲かほでふりつけこゝろでないて〔(しん内 明がらす)あんまりむごいなさけないけふしはなれてこなさんを無事でゐる身の有ならば〕あふてたのしむ事もある
▲気は心どんなきじんもころりとさせる〔油や/\でございみんなしよはうのうら/\へ〕しやくをまけるやあぶらうり」(二ウ)
吾妻がた恋の道連於津那都々一 下
よしたやはん」(三オ)
▲あすはかへりてまたきなんせと〔(しん内 あはしま)いふたはふたりがいつまでもはなれともないこゝろから〕といふてわたしをうまくはめ
▲たこならば七重ひさをばみなさん方へおわびもうさう六十四」(三ウ)
▲荷もかるくあしもかる/\して気もかるく〔(はうた)くまのかわをばあたまへかむり風の吹かは猶更に〕くまのあぶらくまのかうやくあかぎれひゞしもやけのみやうやく〔(はうた)いふて横丁や寒い所をあるくおまへを思ふゆへ〕ちのみかゝへてちんしごと
▲かよふこひぢもあこぎがあみと〔(上るり やゑがすみ)いへばこなたはいらへさへうちなみだぐむ計り也〕たびがかさなりやあらはれる」(四オ)
▲竹にすゞめはしなよくしやんと〔(上るり 彦山)ふしても顔のかはいらしさちとわらひのふすがたなりふうぞくなり春の柳に梅花のかをり〕あだなすがたがわすらりよか
▲(はうた)おまへ百迄わしや九十九迄友に白髪の生る迄〔(言)大ふくもちあつたかい/\/\ふかしたてさつまいも〕(はうた)といふてつぢ/\の風の当らぬとこへ立よりよぶこゑもみんなわたしが有ゆへに(とゞ一)といふていまさらきれられぬ」(四ウ)

   二 浮世都ゞいつ
浮世都ゞいつ 初へん
馬喰町三丁目
吉田屋小吉板」(一オ)
羽子をつく/\あんじて見れば風にそれたも気にかゝる(梅ボリ鶯我)
のぼりつめますほうずもなしに糸のありたけ奴凧(浅クサ 唄女とめ)」(一ウ)
花の兄イといはるゝ梅だ人にけぢめをとるものか(都雄二)
ゆきかさくらかとほ山どりのおまへはあらしのしたごゝろ(梅ボリ喜三)」(二オ)
腹がたつならわたしのからだこゝろまかせにしやしやんせ(梅ボリとく女)
めぐるいんぐわの車のわたしひくにひかれぬこのしだら(梅ボリ玉我)」(二ウ)
お客をとる気はしみ/\ないがうつりかはりにこまるゆへ(梅ボリ喜作)
女房にしちやくどかせむりがりさせてなまけてゐるのもほどにしな(梅ボリ語笑楽)」(三オ)
かういふわけだとうちあけたならおまへのおせわはなさんせう(梅ボリとく女)
ぬしのあるのにいのちをかけてまよひそめたがいんぐわづく(仝)」(三ウ)
湯やのかへりで見かはすゑがほしみ/\しんぼができはせぬ(浅クサ 唄女そめ)
しやくをおさへしその手をおさへぬしのたんきでこのやまひ(おなじく ちよ)」(四オ)
西行のふろしきならねどわたしのからだ一生しよつてゐるがいゝ(梅ボリうた女)
せつかんもなんのいとをふいのちもやつた男ゆへなら苦にはせぬ(浅クサ 唄女はん)」(四ウ)
浮世どゝ逸 二へん
馬喰町三丁目
吉田屋小吉板」(一オ)
見まいとおもへどついおたがいにかほ見あはしてはしらぬかほ(梅ボリ小てふ)
くぜつの種なしはだうちとけずかほはいつでもはつもみぢ(仝)」(一ウ)
うつゝこゝろではしらにもたれおきてゐながらぬしの夢(梅ボリ語笑楽)
けふかあすかのかはいゝ中も淵が瀬となる世のならひ(梅ボリ常二)」(二オ)
身にはおひへをまとつてゐてもこゝろに着てゐるあやにしき(梅ボリとく女)
いろのあるのを初手からしればかうしたわけにはならぬもの(梅ボリ横利)」(二ウ)
なれないま男ていしのかほに泥のつくはづころぶゆへ(サクラ川新孝)
うはきといはれりや一言(いちごん)もないがおまへに見かへる初手のいろ(梅ボリとく女)」(三オ)
女房かたぎではなこそさかねじみなみさほは雪の松(梅ボリ唄たね)
屏風ひとへのわか床なればしんのはなしはのこりがち(浅草大工徳)」(三ウ)
しらぬたびねもおまへとならば夜みち雪みち苦にはせぬ(梅ボリ小きく)
娘のいろだとまだ気もつかずりこうな人だと親がいふ(梅ボリ横利)」(四オ)
はなもさかせずつぼみの枝をおつたわたしのつみつくり(梅ボリ玉我)
見とめもつかないはかないわたしいやになつたらよしにしな(梅ボリ東嶂)」(四ウ)
うき世都々いつ 三編
馬喰町三丁目
吉田屋小吉板」(一オ)
男にのまれちやいくじがないとおもへどほれたがぶはたらき(梅ボリ鶯我)
風に蚊やりがもえたつまゝにむねのほむらがなほまさる(梅ボリ瓠友)」(一ウ)
たまに来てさへはなしもできずかほでわらつて胸でなく(梅ボリとく女)
すへはどうかとあんじるやうでてんからいろになるものか(仝)」(二オ)
男大事にするほど親を大事にしたならほろられう(梅ボリ横利)
ひよわいからだでかせぎがたらず貧苦させるがいぢらしい(梅屋斧)」(二ウ)
あんじなさんなよおまへをおいてほかにうはきをするものか(梅ボリ金松)
やかましい親の目がほをきわどい間にもぬけて来るのがかはいそう(梅ボリたき女)」(三オ)
はしごかけてもとゞかぬねがひかゝアたばねがして見たい
義理にからまれこゝろの竹をやゑにくんだるかございく」(三ウ)
ひゞは手にきれ板の間ずれがかゝとにできるもあら世帯(梅ボリたき女)
朝はひでうの田へ水かけて夜るは潮来へ舟わたし(梅ボリ喜作)」(四オ)
おかしらしいとこゝろをつけて見れば目につく事ばかり(梅ボリ小てふ)
梅暮里唄種校合
哇並踊拳指南 浅草広小路日音院地内奥
          梅暮里」(四ウ)

   三 江戸中若衆どゝ一書ぬき文句 上
江戸中若衆どゝ一書ぬき文句 上
馬喰町三丁目
吉田屋小吉板」(一オ)
▲ぎりもせけんもまよはぬうちよこうなりやりもひもわからない
▲ないてまちあふてなみだのかわかぬうちにまたもなかせるあけがらす
▲むりなしゆびしてよばせておいてすねすとぶつともしかるとも
▲つれなくされてもいやかられてもわたしはいやにはなられない」(一ウ)
▲こふしたつとめの身でさへやけるしろふとのおまへさんはむりじやない
▲しやくがさしこむもうきゝましたわかればなしはむだなこと
▲みちならぬことじやよそふとおもふちやいたがすいたがいんぐはでせひがない
▲おたがひにきをしりやむりだとしりつゝぐちをいふと思へどなをかわい」(二オ)
▲ほれてくらうはせうちでするにいけんするとはきがしれぬ
▲むりを手にしてあきさせやうかそんな手でゆくわししやない
▲うちしやせかれるそとてはなぶるたよるおまへにやすねられる
▲つらいつとめはつらくはないがしのんでかよふがつらからう」(二ウ)

   四 江戸中若衆どゝ一書ぬき文句 上
江戸中若衆どゝ一書ぬき文句 上
馬喰町三丁目
吉田屋小吉板」(一オ)
▲ぎりもせけんもまよはぬうちよこうなりやりもひもわからない
▲ないてまちあふてなみだのかわかぬうちにまたもなかせるあけがらす
▲むりなしゆびしてよばせておいてすねすとぶつともしかるとも
▲つれなくされてもいやかられてもわたしはいやにはなられない」(一ウ)
▲人のこゝろはかわらぬものときまればじせつをまちもする
▲恋もむじやうにかわらぬうちとさとりすぐしてこのしだら
▲きれておまへはしゆつせをせうがたれをたよりにわしはする
▲のめばたまにはわすれもせうがしらふなわたしにひまはない」(二オ)
▲やりくりがつきりやわたしをまたぶちたゝき〔(コトバ)コウ吉やかぶでかゝアをいじめるのかそんなことはゆめにしておいらのうたをきくがいゝよ(そゝり)いまなるかねは三井のかねこゝろはやばせとおもへともねつからさきがいし山であはづにぬれるが夜るのあめ(言)ヲヤ権さんそりやアあふみ八けいだの「そふよ「おいらがうちは七けいだからけんくはができりるよ「そりやア又なぜだ〕ぜゝがないからこのしだら」(二ウ)

   五 江戸のはな名所文句芸者よしこの 下
江戸のはな名所文句芸者よしこの 下」(一オ)
▲にほんばしやお江戸のまんなかお顔じやおはなよおはらじやおへそよ「あだなあねさんまん中まん中がまん中だ
▲やがて二人がねがひもかなすぎしんじつほんしばさほのさきへすゞがもりうはきをやめて「ぬしもしんぼうをしながはよ」(一ウ)
▲いつか青山と待こがれても(しん内)「あへば顔さへ赤坂でめぐろにうるむ涙さへすこしは思ひしろかねといへ共きづよいおとこぎの「ぬしはあざぶできがしれぬ
▲四谷新宿でつい日がくれて花のきみたちのかほをながめてとぼしたいにもてうちんがござらぬ「これがあやめもわかぬしんのやみ」(二オ)
▲早稲田/\とよふ名を付たいつのまにやらつい実がいつてうまいあぢだと評ばんされる「ほんにあのこめはわせなこめた
▲はなのよし原を青楼とはたがいひ初た「ふけてあつくなつてかよふきやく「せけなんだかなんだか」(二ウ)

   六 おつこちのこゝろいき
しんはんとつちりとんはうたどゝ一ぶし
おつこちのこゝろいき
両ごくひろこうじ
両ごくや板」(一オ)
▲ひとめおゝけりやついそれなりにないてぢれふすみだれがみ
▲おもはぬふりするこのやせがまんつのりやぢびやうのしやくとなる
▲きいてこわらしみてうつくしいほれてなかせるとうがらし」(一ウ)
▲さけにまぎれてうらみもいふがしらふぢやしらげてむかふづら
▲そのさけおとめておくれよのませちやわるいしらふでいわせることがある
▲ほかにたよりのないわたしをばしつていながらむりばかり」(二オ)
いよぶし
▲これはせけんのによふぼふのなよせきさきさまにはまんどころきたのかたにはみだいさまやらおくがたごしんぞごないほうおかみさんにはおうちかたかゝあざへもんうちのやつ小ゆびにふうふげんくわをするときはひきづりおたふくやまのかみいくぢなし」(二ウ)
かわたけ
▲ひきよせてねじめもくるふさみせんのかよふこいぢのいとみちもきれて人めをしのびごまひくにひかれぬゑゝまゝのかわあたるわがみのおやのばち
おつこちのこゝろいき 下」(三オ)
いよぶし
▲わたしやおまへにおつこちしぼりいふさへかほにひぢりめんうきなのたてじまそふをまつざかみぢんになるもいとはぬがぬしのこゝろがかはりじまほんにうわきなみづあさぎよこじまはおりいわんすぐちもゆうきになるわいな丈がない」(三ウ)

   七 薫りどゝ一
薫りどゝ一
二へん
馬喰町三丁目
吉田屋小吉板」(一オ)
かねをかり宅せつ/\とかよひゑんよりもとでがきれはてた
待もせぬ客はくれどもまつあの人はこゑもまだせぬじれツたさ(浅クサ 唄女 ちよ)」(一ウ)
しのびあふてもはかなきおふせたばこのんでも身にヤならぬ(おなじく)
おもひおもふておまへのかほを見ればたがひになみだぐみ(おなじく)」(二オ)
おもひやりにもまことはとゞくつゆにやつるゝ草の花
なさけなく/\こひしい今宵●(よぎ)をさかさにきてねやう(梅ボリ 喜作)」(二ウ)
女房がいやでうはきをしたのじやないがされていやならよすがよい(梅ボリ横利)
奴々とあだ名のわたしぬしにふられちヤ身がたゝぬ」(三オ)
こひのなさけやゆかりの色に丘のさわらびもえいづる
雪のはだえになびきし竹のとけて身がるなわがおもひ」(三ウ)
女房にかくしてゐるそのいろをあらけだされちややけになる(梅ボリ 琴我)
しつてしらないかほされるほどこゝろぐるしいものはない(梅ボリ たき女)」(四オ)
かわいさうだよきわどい間にもひとめしのんであひに来る(梅ボリ とく女)
悪法かくのも男のためにすまぬせうちのわるだくみ(浅クサ 唄女そめ)」(四ウ)
薫りどゞいつ
三編
馬喰町三丁目
吉田屋小吉板」(一オ)
みちのない山のさくらはいつふみわけて人がくるやらゑんしだい
今はまつ身でわらはゞわらへすへは高砂そふて見しよ」(一ウ)
といきつく/\あんじて見ればどうですへにはわかれもの(梅ボリ常二)
せつかくのごしんせつだがまづおことはりさんみやうさがしだゆめにおし(梅ボリ横利)」(二オ)
気やすめ真うけで鼻毛をのばしかはりのできたもしらないで(梅ボリ玉我)
すへもしれないあだ縁むすびうはきどうしの実くらべ(梅ボリ喜三)」(二ウ)
ほれた女房のあるその人になんでこんなにほれたらふ(梅ボリとく女)
さぞやさぞあんじちやゐれともひとめがあればたよりをせぬのもむりはない(梅ボリたき女)」(三オ)
友だちの亭主にほれてはすまないけれどしあんのほかなら義理もかく(浅草 唄女小菊)
とてもあへねばうたゝねよひ寝夢であふのをたのしみに(梅ボリたき女)」(三ウ)
ほれてゐるのをしつてはゐれどお気のどくだがおことわり(梅ボリとく女)
他人とはおもはぬこつちの実意もしらずへだてこゝろがみづくさい(梅ボリたき女)」(四オ)
なんぼほれたを見すかされてもばかにされてははらがたつ(梅ボリ小てふ)
安政四巳年初春新板
梅暮里唄種校合
○新作度独逸花筏 全一冊 梅暮里連集
○新作色香大都会 仝   仝」(四ウ)

   八 心いきどゝいつ続しん文句
心いきどゝいつ続(つゞき)しん文句 上
仙女香 取次
馬喰町三丁目
吉田屋小吉板」(一オ)
▲ひとにやうはきとおもはれながらむねにくらうがたへはせぬ
▲うきよのぎりにわしやからまれていとしいおまへにはらたゝせ
▲だまれおんなめそのくちぐるまうまくのせてももふのらぬ」(一ウ)
▲なぜにそのやうにはらたてさんすうたがひぶかいもほどがある
▲まゝにならぬがうきよのならひ(しん内)「ないてうれしい日もあれば「わらふてつらい夜半もある
▲なみだにはげしおしろいになをし」(二オ)いやなきやくしゆにつとめぶり
▲こひにこゝろもむすぼれあふて(しん内)「ほどけもやらずうつとりと「ねむればおまへをゆめに見る
▲きつね女郎にわしやばかされてはだかでしんしやうはからほうず」(二ウ)
どゝいつ続新文句 下」(三オ)
▲つらひくがいになみだのあめのはれぬはつとめのうきくらう
▲きつねおんなにばかされぬうちいなむらかゝしの気をやすめ
▲はらをたゝずとまあまたしやんせ(しん内)「おまへのそふしたかんしやくは」(三ウ)いつものくせとはいひながら「あんまりじやけんなこゝろいき
▲ぬしをそのやうなはかないなりにしたのはわたしとなみだぐみ
▲わたしもぬしゆへねんきをいれて身あがりくらがへうきくらう」(四オ)
▲かほも手あしもないしやう迄もやつれはてたよぬしゆへに
▲はなにあらしもまたくるはるのさかりのじせつをまたしやんせ
▲まてばかいろのひよりがある?むねのくもりもはれしつき」(四ウ)

   九 こゑじまんうかれどゝいつ
こゑじまんうかれどゝいつ 上
文光堂」(一オ)
▲はるさめにそよとめがさめきくつめびきでおもはずぬらすがまくらがみ
▲おやのゆるさぬさみせんまくらほんにばちでもあたるだろ
▲おためごかしできれたといわせとふざかろうかにくらしい
▲すへはなみだとせうちでほれてたべざなるまいこのわさび」(一ウ)
▲ないてまちあふてなみだのかわかぬうちにまたもなかせるあけがらす
▲しやくがさしこむもうきゝましたわかればなしはむだなこと
▲これてくろうはせうちてするにいけんするとはきがしれぬ
▲みちならぬことはよそうとおもふちやいたがすいたがいんぐはでぜひがない」(二オ)
▲くるたびにくろうかけるはめんぼくないといふてあわずにやいられない
▲ねたかほをあなにあくほどみるあんどうもなみたてぬれるかくらくなる
▲ぜうのありたけしておくからはうそもうはきはさせられぬ
▲わたしがうすぎはさむくはないがしらふじやおまへはつらかろう」(二ウ)
こゑじまんうかれどゝ一 下」(三オ)
▲たつた今かへしたあとからあいたくなりてとがなきようじをかみつぶす
▲井戸よりもふかい心をぬしやくみあげてちやにすりやわたしもあつくなる
▲のめばたまにはわすれもせうがしらふなわたしにひまはない
▲やけばやくほどつのるとしれど見ていてうわきはさせられぬ」(三ウ)
▲人のこゝろはかはらぬものときまればじせつをまちもする
▲あるないでくろうたつふりさせたりないでうわきでなかせりやたのしみか
▲きげんとらせる気はないけれどあへばあまへてみたくなる
▲とうざかつたらしんだとおもへいきのあるうちやこすにやいぬ」(四オ)
▲わたしが心をぬしやしらぎくで(しん内)あんまりきつよいおとこ山ひやであらふがせうちうしてこゝろなをしてくださんせ(ことば)「いよ/\としまやうまいぞ(ことば)「おや/\十六や十七をとしまやとは「ハテそのわけは(どゝいつ)「まへのおくらからしろざけだすて是ないかいな引  四丁之内おはり」(四ウ)

   十 魁どゞいつ
魁どゞいつ 二編
馬喰町三丁目
吉田屋小吉板」(一オ)
お月さまさへ嫁いりなさる三五でだんごのこができた
のめぬせうちでいつぱいついだ酒はすけたいしたごゝろ」(一ウ)
しんのなみだでぬらした袖をぢんすけだますにまたぬらす(梅ボリ琴我)
風のやなぎでやるせのなさをおもふおかたにしらせたや」(二オ)
うつかりと籠を出されてした切すゞめもとのくがいがうらめしい
おこつたかほしてついわらひだしはては泣だすふかいなか」(二ウ)
どふでわたしはぶいきなうまれ花のあたりの翌桧(あすなろふ)(梅ボリたき女)
すへ膳のはしをとらぬはお腹がよいかたゞしや女房がこわいのか(梅ボリ小きく)」(三オ)
だれがまいてもはたけがよいかできる子どもの種ちがひ
やつかいものだよちんねこばゝア口をだすのが小うるさい」(三ウ)
朝がほやあした咲のを捻つておいてぬしの寝おきのはなにする(梅ボリ常二)
立つけがいゝとてうしをあはしてゐればうれしがるたのはなをまく(梅ボリ喜作)」(四オ)
りんきらしいといはんすけれどだれがこんなにぐちにした(梅ボリ横利)
あふていはふとおもふたこともいはでわかれてあとくやむ(梅ボリとく女)」(四ウ)

   十一 上品一撰どゝいつ
上品一撰どゝいつ 下
八丁ぼり 松坂やはん」(一オ)
▲つきあいと人をかこつけよくそのかほでいひわけされるにはらがたつ
▲よざくらにうかれたしよかいときのうたぐりはゆきのふるよがあんじられ
▲よそへあがるをせくのじやないがしらぬがほとけでくちおしい
▲うしろすがたをもしへとよんでかほがちがつてきのどくさ」(一ウ)
▲まことしんほふひとつといふかあわずにしんぼはできはせぬ
▲あきらめるいぢか有なら何此やふにばかなおんなといわれない
▲もときにまさりしうらきといふがもとのおかたにやかへられぬ
▲あれがわかれとしれたらほんにはなしのこしはせまいもの」(二オ)
▲たま/\しゆびしてあふみはほんにはなすはなしもあとやさき
▲とてもそわれぬあくゑんならばせめておそばでこまつかへ
▲おまへばかりをおとこのよふにまもるわたしの二ほんほう
▲むねじやともあれ人めのせきへあきらめましたといふつらさ」(二ウ)

   十二 上るりいりいきなどゝいつ 下
上るりいりいきなどゝいつ 下
▲(どゝいつ)はるかぜにそよとあがりしあのとんひだこ〔(とみ本)(むしうり)どうでにやうぼにやもちやさんすまへわたしばかりがほれていてかそのへんじおまこ?ぎもおもひ〕ひとのしやくりにやのりわせぬ」(一オ)
▲(とゞいつ)きいてよいのがやまほととぎすふみのへんじやことのねも
▲(とゞいつ)はるはことさらまたきもかはる〔(???)とうちうすころくおたから/\/\(むめのはる)たからぶねこくはるかいによいはつゆめ?三つぶとんへんてんさんとそのふしのはなのにしきのかきりやくなみのりいでしきち/\/\と〕ふなぞこまくらでふくのかみ」(一ウ)
▲(とゝいつ)つとめのならいぢやとわいゝながら〔(冨本)(あさま)いやなきやくにもひよくござおもふおとこのやまとりの〕おもわぬおかたにみをまかせ
▲(とゝいつ)二せとちがいしたいじなおまへ〔(ときわづ)(おはん)なからへいよとはそりやとうよくなわたしやしんでもおまへよりいとしいものかあろうかいな〕わかれりやこのよによふはない」(二オ)
▲(とゝいつ)わかれのつらさにかみかきあげて〔(ときわづ)(しのふうり)二せのかためとたきしめてつい手まくらのヲヽそゝけかみ〕あゝもしれたやあけのかね
▲(どゞいつ)ほれたわたしがうるさいならは〔(?本)(おそめ)そんなものよないゝはけおそれよりわしがいやならは〕ほどよくうまれてこぬがよひ」(二ウ)

   十三 しんない心いきどゞいつ
しんない心いきどゞいつ 上
馬喰町三丁目
吉田屋小吉板」(一オ)
▲女こゝろのわしやひとすじに〔(しん内)(いだ八)すいたがいんぐわつかのまもそばはなるゝがいやまして〕どうまあかへしてやりやしよふか
▲けさはかへつてまたきなんせと〔(しん内)(あはしま)いふたは二人りがいつまでもかいとふしたいこゝろゆへ〕といふてわたしをのせるきか」(一ウ)
▲かほではらたてこゝろでないて〔(しん内)(明からす)あんまりむごいなさけになやこよいはなれてこなさんか〕またあふしあんがあるかいな
▲おまへがしんでもてらへはやらぬ〔(しん内)(小さん)なかしやんせ/\そのなくなみだはふか川へながれて小さんがくんでのみや〕わたしやこにしてさけでのむ」(二オ)
▲なにをくよ/\さけでものみな〔(しん内)(明からす)どふなるのぞながらへてわがなきあとで一ぺんのゑかうをたのむさらばやと〕いふをとりつきしのびなき
▲ほんにおもへばおまへとわたしや〔(しん内)(つな五郎)いふはいまさらすぎしあきはつの一座のつれのうちおまへのなりふりあいさつが〕すいたがふたりの身のつまり」(二ウ)
しんないあだもん句どゝいつ 下」(三オ)
▲おまへをおもふてくりことながら〔(しん内)(らん長)おやにそひねのゆめにさへ見もしりもせぬ人なかへうられくるわのうきつとめ〕たよりにおもふはぬしばかり
▲どふしたふかいあくゑんじややら〔(しん内)(明からす)そなたもともにといゝたいがいとしそなたを手にかけて〕どふしてわかれていかりやうか」(三ウ)
▲あふた初会にすいたがいんぐわ〔(しん内)(つな五郎)のぼりつめたる二かいのはしごおやにさかろふこの身のうへ〕みんなそなたがあるゆへに
▲せけんかねたるわたしがくろう〔(しん内)(らん長)おまへのそふしたかんしやくはいつものくせとはいゝながら〕すこしはめをかけてくださんせ」(四オ)
▲おまへをあんじて神様へしほだち茶だち〔(しん内)(あわしま)わづか四月か五つ月にきつうやつれさんしたのう〕わづらふてもくだんすな
▲はりといきじとみなくみわけて〔(しん内)(いた八)おとこの身でさへいゝにくいにこうしたつとめのそのなかで〕みんなそなたのくめんづく」(四ウ)

   十四 しん板色里たのしみどゝいつ
しん板色里たのしみどゝいつ」(一オ)
ほれていれどもしらをばきれといつかのろさがあらわれる
いまさらきれては人めにすまぬこれをさつしてくださんせ
あだな事したそのいゝわけにぎりと名がつきやすむかいな
やがて見さんせおまへのそばでまへだれたすきにはりし事」(一ウ)
むねに手をあてつまらぬものとおもひながらもきれられぬ
たらちねをかいてだいじなお前をすてゝほかにうわきがなろふかへ
そばにいてさへ恋しいものをましてはなれてくらすもの
わたしやながれのつきゆきはなよふりつてらしついろにそむ」(二オ)
さけがいわせしむだとはしらずまことあかしてはづかしや
なまじなまかに過しの御げんなをもおもひがますわひな
ういもつらいもこゝろにこめて人にかたらぬわがこゝろ
どふでこぬきとおもふていれどもしやとすて文やつて見る」(二ウ)
さきにおもわぬ恋じにまよひほんに身でみがばからしい
ひとをたのめばせけんへしれるいつそうちあけはなそふか
ぐちなおんなじやはてやかましいおれもおとこじやむねにある
アヽもふくやしやねんきがなくはしよふもよふもあらふのに」(三オ)
ぬしのねがほをつく/\ながめこふもかわゆくなるものか
たつたいちどの御けんにまよひうわさするのもむねのうち
いちどや二どではさんみやふさがしとてもくるならす衛ながふ
あだにさんすなせけんの人がうわきものじやといふわひな」(三ウ)

   十五 新板おつこちどゝいつ
新板おつこちどゝいつ 上
八丁ボリかじ町
松吉板」(一オ)
▲ぬしはふかくさこいぢのさとてせう/\なりともねてみたい
▲あんどんのともしあぶらもなたねの花よむかしをわすれずとびこむあのこてう
▲ゆふぐれにいぶすかやりがわしやないならばおつるなみだでうきなたつ」(一ウ)
▲とかげくうかやあのほとゝぎすひともみかけによらぬもの
▲かたやまこかげのわしややぶうぐひすよおまへはしるまいないている
▲ひとめしのんであらかなしさはむねでこがれてしらぬかほ」(二オ)
▲いやであろふがこゝきゝわけてしんぼしてくれいましばし
▲しのぶこいじとよるふるゆきはひとめしらずにふかくなる
▲いちねんといへばひとくちまつ身のつらさいつかねんきのかしくぞへ」(二ウ)
おつこちどゝいつ 下」(三オ)
▲いさむなかにもひとりで???なぜといわれてにがわらひ
▲ひとのはなとてながめてゐたらいまのくろふはせまいもの
▲いまはかれきでつないでおいていまにさきたやふぢのはな」(三ウ)

   十六 新板江戸じまん冨家どゝいつ
新板江戸じまん冨家(ふうか)どゝいつ 上
松坂屋吉蔵板」(一オ)
▲これほどわたしに三つ井(駿河丁)だそなた白木(通壱丁目)お江戸にまたとない
▲もふひとめあいたい三谷(両替丁)ヱヽなつかしい田庄(長谷川丁)へこがれてしねばとて
▲大丸(大伝馬丁)のかねやしんしよも何いるものか鹿嶋(新川)そなたとそへばいゝ」(一ウ)
▲たとへ野ゝすへ大嘉(?丁)の住居わたしや内ニ而播新(金吹丁)ごと
▲千波(?田丁)わたしもつとめのこゝろいまじや客とはおもやせぬ
▲わたしや豊田(芝三田)から女房ごゝろ柏屋(本丁)つばり客のきか」(二オ)
▲ての字(八丁ぼり)さげてもおまへとふたりあすはどふして鴻儀(茅ば丁)てと
▲川村(???丁)おれゆへくろうをするとすてこ鳥羽屋(三十間ぼり)にいわしやんせ
▲伏見屋(佐久間丁)ゑんで?ふと馴染たはやく内田(昌平外)といわれたい」(二ウ)
新板江戸じまんこゝろいきどゝいつ」(三オ)
▲小津(伝馬丁)ナこといつチヤわたしにこまらす計り田畑屋(伝馬丁)情もかけさんせ
▲分銅(かうじ丁)見そめたこの胸のうちヤ岩城(かうじ丁)はゆふに升屋もの
▲ほどゝいゝ何につけても坂重(かうじ丁)の事が酢屋(?丁)タおかたとひとかゆふ」(三ウ)
▲越前屋(市ケ谷)二年三年あわねばとても伊坂(新ぼり)こゝろもかわるまい
▲豊嶋屋(鎌くらがし)さしきそのことのはは四方(いづみ丁)ヤうはきでいやせまい
▲じれつたいてつほう玉か矢野ゆくやうに富田屋(三十間ぼり)きたいぬしのそば」(四オ)
▲鳥渡おみあのや恵比寿屋大黒(石丁)三のやうにおまへとくらしたい
▲くろう駿河屋わたしのねがゐ川喜田(伝馬丁)おもふぬしのため
▲伊豆蔵(本丁)にいまはどふしていやしやんすやらいつそあ伊藤(下谷)松坂屋」(四ウ)

   十七 しんぱん江戸めい所浅草八けい字あまりどゝ一ぶし 下
しんぱん江戸めい所浅草八けい字あまりどゝ一ぶし 下」(一オ)
▲てきはおゝぜいみかたはひとりぬしはつれないふたごゝろ
▲さけといろとでおもしろさうにみへてこゝろにらくはない
▲かごのとりでもじせつをまてばそらははをのすこともある」(一ウ)
▲たとへどのよにいはるゝとてもしんぼするのがぬしのため
▲たよりなきみにたよりができてもとめましたわよひとくろふ
▲おまいばかりにくろふはさせぬまかりちがへばひきまみげ」(二オ)

   十八 新作きも玉都といつ
新作きも玉都といつ 上
八丁堀水谷丁
松坂屋板」(一オ)
▲せうちして人におらせるあのやゑざくらぎりほどせつなひものはなひ
▲はでないろかにさいたるはなはよるのあらしにちりやすい
▲たてしびやうぶにふたつのまくら世事とまことのいれどころ」(一ウ)
▲おもふこゝろをめかほでしらせいつかほに出るはなすゝき
▲かみをかけたるきせうをすてゝこゝろがらとてくろうする
▲人のはなしにうはさをきいてむねのくろうがなをまさる」(二オ)
▲おやといゝかけふときがついてあたり見まはしわらひかほ
▲あふてひとことはなしもできずひとめありやとてたにんがほ
▲こいのてならひいつかきそめてふでにいはせるいろはもじ」(二ウ)
新作きも玉都といつ 下
八丁ほり水谷丁
松坂屋板」(三オ)
▲人のうはさやしやくりにのつてうたぐりやしやんすもほどがある
▲わすれやうとてむり酒のめばよふてなをさらおもひ出す
▲きざな小うたやうはさがきこへねてもねつかぬむなさはぎ」(三ウ)
▲三味線のいとに三筋のねいろはあれどおもふこゝろはひとすじに
▲きたならばあやまらせふと思ふていたにさかねぢをくはせて私にあやまらせ
▲うらみいふのもすねるもなくもみんなおまへがさせるわざ」(四オ)
▲ぬしのたよりとかどあけみればまたもくいなにたゝかるゝ
▲人目しのんでくるぬしよりもそれをまつ身はなをつらひ
▲かすみたなびくあのふじのねもはれてうれしきあさげしき」(四ウ)

   十九 しんぱん客人女良しゆかけ合文句都々一ぶし
しんぱん客人女良しゆかけ合文句都々一ぶし 上
茶吉板」(一オ)
▲やめた酒てものめならのもをかみのばちでもいとやせぬ
▲どふぞあいきやうこぼさぬよふにつげはうちばのめはちふん
▲たよりすくなのわたしがみをばぬしがみすてりやしぬばかり」(一ウ)
▲なにをいふにもとしわかばゆへいろけづいたら秋がくる
▲みればみるほどきれいなあやめ根からたゞせば水くさし
▲どろ水とせいといやしましやるな蓮のはなさへどろにさく」(二オ)
▲なびく心でわれおちにきにあきかぜふいたかおみなへし
▲ぬしにあふよはおしろいの花よるはひらいてあさしぼむ
▲いけてみしやんせ小ぎくの花をぬしの水あげでとこにさく」(二ウ)
しんぱん客人女良衆かけ合文句都々いつふし 下
松坂屋板」(三オ)

   二十 新板せたいどうぐぐはらくたどゝいつ
新板せたいどうぐぐはらくたどゝいつ 上
馬喰町三丁目
吉田屋小吉」(一オ)
▲なべもておけもさげましよほどにかまにやなさけをかけなんし
▲どなべすりばちかんしやくおこしわんもちやわんもむかふづら
▲しやくしなりやこそおはちのなかでつらいつとめのめしをもる」(一ウ)
▲ぜんにうつわのかづ/\あれどはしかなければたべられぬ
▲ぬしはちやせんよわしやこびしやくよさぞやちやぶくろうれしかろ
▲ひんぼどくりはかねてのせうちなかのむまいがわしやうれし」(二オ)
▲かわいごとくにとびんをかけてあつくなるほどおちやにされ
▲こふこなりやこそはちにもはいりねずみいらずのかこいもの
▲やぶれせうじのそのよのつらさろくにふすまはないわひな」(二ウ)
道具づくしどゝいつ 下」(三オ)
▲かさねだんすはとだなの女房ふかれはたかれゐるわいな
▲かわいものじやよだきねのひばちしかみひばちのにくらしさ
▲やすひ女郎衆はいしうすちやうすまわし/\てよをあかす」(三ウ)
▲ばせうちやうちん手しよくをやめてふらになるとはなさけない
▲うちのやくわんがどふこのゆでもみづにあわつにいられふか
▲ちよくでゆこふかめかごにしよふかいまはちやわんのあとやさき」(四オ)
▲ふとんかぶるはこたつのやぐらわたしやおまへをはらやぐら
▲はさみばこではわしやなけれどもほんにおさきのかたおもひ
▲ゆみやてつほうはまとふをねらふしりをねらふはかつぱかご」(四ウ)

   二十一 新板月雪花撰文句どゞいつふし
新板月雪花撰文句どゞいつふし 上」(一オ)
▲よふ/\としのびあければらんまがしらむぢれてかみきるふさよぶじ
▲まゝならぬ世とあきらめてもかほみりやぐちをゆうて心でないている
▲あつい御げんにまた御いけんもきゝいれましたがきれられぬ」(一ウ)
▲恋やみでしよくものんどへはとふりはせぬがくいつきたいのはぬしのかほ
▲いつゞけのつもるはなしにけさしきかへてへやのしきへのたかいこと
▲にくい人だとくちではいへどぢつはいのちもいとやせん」(二オ)
▲ないていずともふみでもかいてともたちをたのんでよふがよい
▲ともたちよふたのめばみなうはのそらせくきはあれどもぢつはない
▲しみ/\とたいてねもせではたからせかれ〔(しん内)どこにとふしていさんすやら人のうはさによしあしをきくにつけてもきくろふはつのり/\てしやくとなる〕とがない子しよくにやつあたり」(二ウ)
▲あきのそらかよ身をさらしなの〔(しん内)うつりやすしよ木はもみじ〕くもなくはれて月のゑん
▲ふかくなるほどたがへのこゝろ〔(しんない)はだと/\はしらゆきのともにきゆるもいとやせん〕つもるおもひもねてとける
▲木になる此のみをまた白梅の〔(しんない)あいたみたさがとびたつばかりかごの鳥かやうらめしや〕とめてはつねをたのしみに」(三オ)
▲しのゝめにわかれせわしきみおくるすがたきりがじやましてまゝならぬ
▲としがちがをが女房によぼがあつとじやふをたてずにおくものか
▲きゝわけぬいかに年はがゆかぬとゆふてほかにおとこのないよふに」(三ウ)
▲きゝわけましたがわしやきれられぬたとへなわめにかゝるとも
▲ほつとためいきなみだとともに〔(しん内)なんのいんがでこのよふにいとしいものかさりとては〕(とゝ一)身につまされて一とりごと」(四オ)
▲おろすわさびとこいじのいけんきけど??ほどなみだでる
▲はだと/\をだきしめおふてこふもかわゆくなるものか
▲おもいだしはたでちろりとかんづけられてはづかしそふにかほにそで」(四ウ)

   二十二 新板どゞいつぶし
新板どゞいつぶし 上巻
八丁ホリ
茶吉板」(一オ)
△ちる花をさためなき身とうたにはよめどさかざなるまへ春の風
△わけもないのにきにくせつけてかほみにやくろうでねつかれぬ
△いろにまよいし身はとうがらしなみだめにもつこゝろがら」(一ウ)
△ほれたわたしがうるさいならは〔(上るり)そんなそのよないゝわけをそれよりわしがいやならば〕ほどよくうまれてこぬがよい
△人目おふけりやツイそれなりにないてぢれふすみだれかみ」(二オ)
△せきにせかれてそのうへならす〔(しん内)かわいやこの子を手はなしてとふしてかたときいらりよふか▲(ことば)さあ/\しいをしてあすはとうからおしんなれねへやれ/\ ねんねこよほんにかわいやねがほさへ〕ちやんにそのまゝいきうつし
△わらはれ草なるわしやわらぞうりすへにやきれてもなは残る」(二ウ)
しん文句どゞいつぶし」(三オ)
▲両手をくんでかんがへみれどおもひきられぬぬしの事
▲ほれたおかたによくにた男じつがあるやらきかまぼし
▲しんでわかれは此よのならひぬしとわたしはいきわかれ」(三ウ)
▲さけにまぎれてうらみもいへどしらふぢやしらけて向づら
▲さきがさきならくろうをしたるかいもなきさのあまをぶね
▲いへばどうやらさいそくらしくいつまでそはづにいらりようか」(四オ)
▲せかれている身のまたこうしさき〔(新内あはしま)アノおまへは丹七さんかとおどろけばほうばい女郎もやぼなかんすいつけたばこもわれかちになみだとともにかたりおふやりてのすきがこいたかくまた一トところへよりあはづとてん/\にはなれていやしやんせくせのわるいとわめかれておとはゝかほみてうれしいやらまたかなしさがましたやら〕しれてかむろにやつあたり」(四ウ)

   二十三 新もん句ゑ入どゞいつ
新もん句ゑ入どゞいつ
馬喰町三丁目
吉田屋小吉板」(一オ)
はねをつくばのけしきにそへてむすめざかりのふじびたへ
おもふおかたにたゞあを/\とこゝろのたけやまつかざり」(一ウ)
すごひやうだよみかつきぐしをさしたやなぎのあらひがみ
ほれたほのじとつひなきそめてうめにはなれぬにほひ鳥」(二オ)
くらうするのはてんからかくごいきなていしゆをもつからは
いろであらうとおほきにおせわおかやきもちもほどにしな」(二ウ)
うはきこてふがすみれをすてゝつまにまよふかさくらそう
ひとのうはさもひちじう五日たつかたらぬにきれことば」(三オ)
いまじやまじめなふうふでゐれど〔(清元松影)わつちや是でも水道の水がしみわたつたるありがたきお恵みうけてのぼり船(ことば)モシふねがかしぎやす〕トいはれたこともあつたのさ」(三ウ)
ぎりもせけんもなにしらかみをよごすきしやうもほれたいぢ
おやにすはれるわたしのつゆをとうぞおまへにすはせたい」(四オ)
こんなむすこをこせへておいていまじやおやぢはやぼをいふ
うめがさかねばこんどははだかいちばんうまくあけのはる」(四ウ)

   二十四 しんもむく佐和里都々一 義太夫いり
しんもむく佐和里都々一 義太夫いり 全
福亭三笑作」(一オ)
やぶれかぶれと身は三味せんの〔(安達三ノ切)お願申奉る今のうき身のはづかしさ父うへや母さまのおきにそむきしむくひにて二世のつまにもひきわかれなきつぶしたる目なしどり〕くろふするはづあやのばち」(一ウ)
角力取りをば男にもてば〔(?川川の段)江戸長崎国々へゆきやしやんすりや??の留守は猶更女気のひとりくよ/\ものあんじ夫人にけがのないやうにといのる神さん仏さん妙見さまへせう?ものと?しやんして顔見るまて〕片時やすまぬわたしが気」(二オ)
?たなるこゝろはみぢんもないが〔ゑこふしやうとておすがたをゑにはかゝせはせぬものをたましゐかへすはんごんかうめいぐはのちからもあるならばかわいとたつた一ト言のおこゑかきゝたい/\とゑそうのそばに身をうちふし〕とうもまことゝおもはれず」(二ウ)
たゝかさんせよおまへのからた〔(先代萩の段)なんともないとじうめんつくりなみだはいづれどおさなきにほめられたさが一つぱいに〕ちよつと手つけにめをまはし」(三オ)
秋の夜風の身にしみ/\と〔(いざり??の段)つきそふわたしは女子の身ちからにおもふ主の身はこしひざぬけてあしなへとなりやつれたるふうふがるろふ〕たれを松むし音もほそく」(三ウ)
のぼりつめたる二階のはしご〔(寺子屋の段)あすの夜たれか添へちせんらむかゐ?しるおやこゝろつるぎと死出のやまけこへあさきゆめみしこゝちして〕いまさら目がさめあきらめた」(四オ)
おまへの浮気を知りつゝほれて〔(紙治)なかしやんせ/\そのなくなみだがしゝみ川へなかれて小春さんくんでのむわいな〕りんきするのもぬしのため」(四ウ)
およばぬ恋路と知りつゝほれて〔(すしやの段)たとへこがれてしぬればとて雲井にちかきおん方へすしやのむすめがほれらりよか〕とはいへ女房のあるおかた」(五オ)
元ゆひの切れて仕舞ば根も葉もないが〔(白木屋の段)そりや聞へませぬ才三さんおまへとわたしが其中はきのふやけふの事かいなやしきにつとめたその内にふつと見そめてはづかしい恋のいろはをたもとから〕聞ばきゝ??腹がたつ」(五ウ)
娘ごゝろのたゞ一とすじに〔(野崎村の段)あんまり逢たさなつかしさにくわへおんさまをかこつけにあひに北やらみなみやら〕きて見りやつれない事はかり」(六オ)
人のいけんも火水のせめも〔(琴ぜめの段)さらばといふ間もないほどにせはしないわかれ路はむかしの?/\引かへて木綿/\とおちぶれし〕思ひきられぬこいの意地」(六ウ)
切るに切られぬ悪ゑんなれば〔(帯屋の段)わたしも女子のはしじやもの腹もたつしりんきのしやうもまんざらしらぬじやなけれどもう???とのごにきをのませわづらひでよふかと〕どうかしなよくするがよい」(七オ)
人めしのんで恋路の関を〔(新口村の段)それはうれしうござんしやうさりながらわたしがとゝさんかゝさんは京の六条じゆずや町〕こへてとうげの又くろう」(七ウ)

   二十五 しん板はうたおもしろどゝいつ
しん板はうたおもしろどゝいつ
本金」(一オ)
月雨やある夜ひそかに恋路のやみに主の御けんを松の月
かはる枕の寝覚のとこに寝ぐらさだめぬ鳫の声
おれもつらあてとは思へどもみかへる女がどふもない」(一ウ)
しみ/\今日しは身につまされておちぬしあんもこひのぐち
水の月手にはとれぬとあきらめなからぬれて見たさの恋のよく
しみ/\けふ日は身につまの恩どうでも女郎はかはぬ?(二オ)
晴天帯紐得心津久伝堅結之恋乃?也(はれておひひもとくしんづくでかたくむすびしこいの?や)
東世主人題」(二ウ)
本てうし
君はいまこまかたあたり〔川竹のうきみは風の柳かないやなきやくにもひよくこさおもふをとこのやまどりのわかれのつらさにそでひきたばこほんにくがいはまゝならぬ〕ないてわかれしほとゝぎす
とゝ一
(本てうし)
をとこおもへは身をすりばちのむけんちごくもいとやせん」(三オ)
もとうた
(三下り)
わか恋は住吉うらの夕げしきたゞ青/\とまつばかりこれがこひやらなさけなや
住吉から

こひ人はおばすて山の夕げしきたゝちら/\と水かゞみとこにすむやら秋のそら


わが恋はいや/\むかふ夕けしやうたゝくよ/\となくばかりこれがとゞかぬなさけなさ」(三ウ)

   二十六 新板十二月都々一
新板十二月都々一 上」(一オ)
▲あだなむすめにうはきなとしま〔(常磐津)はるははねつく手まりうたひとごにふたご身はよをしのぶいつかむかしのさゝめ事なんのわすれふやくそくを九つ此よ〕さきの世までもかはりやせぬ
▲初午のきつね女郎しゆについばかされて〔(常)かよひなれたるしゆじやかのゝつゆふみしたくじゆんそくはふたへばなをのまへわたる「大もんぐちをしのび入引あいづのしはぶき二つ三つ「これきたぞやきたはいのふと〕おこしうりではあるまいし」(一ウ)
▲やなぎしまだのみやうけんさまへ〔(常)手をひきあふてこのみちをめうほうれんげけふはまたあの子をいそぐめうとづれゆめのうきよの恋かぜにちりゆくはなやむめわかの〕しぐれざくらのなみだあめ
▲ふか川へしほがさしみであの初がつほ〔(富本)かしのさうばはきなかでもまけぬ江戸つ子すいどの水にあらひあげたるいけたごのいきでいでもの見世さきへ〕ふねがつき夜でぬしのかげ」(二オ)
▲四つにだきしめ手あしをからみ〔(常)かはづと見たてしやう/\がまたのときけばこわけれどいろにはうちわもあげづめのひげが行月にたつかときのせきもりがひつかけた酒のしるしにあらね共谷風/\小の川/\〕しやうぶ五月の家根にさす
▲あけりやおとゝしわかれたひこに〔(清元)めぐり/\て大やまのせきそんさまのひきあはせおもへばほんになむきめうてうらいと〕ふかいゑんではないかいな」(二ウ)
浄るり十二月よし此 下」(三オ)
▲いろがみときけばまよふがうき世のならひ〔(新内)かつてなことのぐわんにぐわんだいしさんのおみくじも〕とる手にすがりてかへしやせぬ
▲十五夜のつきのあかりですがたを見れば〔(新内)おとわはかほ見てうれしやら引またかなしさがましたやら〕はれてあはれぬこひのやみ
▲きくづきのはなのよし」(三ウ)わらにわかのときに〔(新)なかのてうで見かけたのあげやまちへはいらんしたのどこの二かいでこゑがする〕うはきもたいがいほどがある
▲ゑびすかうおめでたいよりおかほが見たい〔(新)どこにどうしてゐるとてもかはるわたしじやないわいな〕それにじやけんなことばかり」(四オ)
▲とりのまちならくまでにかけて〔(新)わしややりはせぬはなしはせぬころしておいてゆかんせと〕のろけげんかをして見たい
▲としのくれより日のくれるのを〔(新)まつ身になればはてしなくもはや見へそなものじやがとのびあがるうちとふらんす(同)ヱヽモぢれつてへよ〕よぶはたけやのわたしぶね」(四ウ)

   二十七 新文くゑいりどゝいつ
新文くゑいりどゝいつ
馬喰町三丁目
吉田屋小吉板」(一オ)
なかのいゝはづこれ見てくんなさんどのはしさへふたりづれ
しかのつまこひつまどにもれてひとりねるよのうきまくら」(一ウ)
こゝろのおにゆり人にはしれぬすがたやさしきかほよばな
こむすめとらへてむりおうぜうにあさひなさぶらうのもんやぶり」(二オ)
かぜふかばおきのしらなみたつたりゐたりもしやぬしさんがきたのかと
ふるいたとへのひなたのすいくわあつくなりたやひゐきれん」(二ウ)
なさけなつのゝをしかのつのよそのつかのまもわすられぬ
さけのとがゝとりやうけんすればまをとこされてもすてられぬ」(三オ)
おやのゆるさぬえにしとまゝよ〔(義太夫杉さかや)ふうふのやくそくほしあひにかさゝぎならぬおだまきをちよのなかだちとりかはし〕おもひおもふたなかじやもの」(三ウ)
あるよひそかにさみだれすがたうれしいしゆびをまつのつき
にようぼたとへばとこのまはしらいろはいけばなたうざもの」(四オ)
おんばはおあひだわらかしやがるよひろくてよかつたことはない
よけてあをたにこかるゝほたるれんじまできてかやのそと」(四ウ)

   二十八 どゝ一ぶし心の花実
どゝ一ぶし心の花実」(一オ)
▲これほどおもふてもしそわれずはつちにおもひのねをのこす
▲いやであろふがこゝきゝわけてたらわぬわたしもたつよふに
▲ほかへいきたいおまいのくせはつきやいだといやすむのかへ
▲ほれていれやこそないことまでもおもひすごしてあんじられ」(一ウ)
▲あいた見たさはとびたつばかりかごのとりかへなさけない
▲ぬしのこゝろとたごとのつきよとこへまことがうつるやら
▲たつたひとつのきのもちようてせけんせまくはたれかした
▲ふかいなかぞへこふまでされておもいきられぬきがしれぬ」(二オ)
▲いうてくようかいわすにおこかさきのようすを見てのこと
▲おまいおもへばよのめもねずにとわづがたりでなきねいり
▲さけはのんでもおとなしければわたしのほれたもむりはない
▲あいたさこらへているみのつらさつのりやじびやうのしやくのたね」(二ウ)

   二十九 どゝ一ぶし心の花実
どゝ一ぶし心の花実」(一オ)
▲とふざあわねばすがたもかほもかわるものかへこゝろまで
▲いまにもわからぬなまみのからだじせつまてとはきがしれぬ
▲たま/\しゆびしてあふみじやないかはらちがほせずきげんよく
▲思ひきろふと日にやいくたびかおもやつのりてをもます」(一ウ)
▲たとへあわすとかほ見ぬとてもなんでいまさらきれられふか
▲こぼれまつばのあやかりものよかれておちてもみやうとづれ
▲たつたひとばんあのはりやいにあわざたにんでくらすもの
▲人もほめるしわたしのきでもすいたらしいとめにみへる」(二オ)
▲きれでみやがれたゞおくものかこわくないよふにばけて出る
▲いかにいづもがとりこみじやとてむすびちがいのことばかり
▲あふたゆめみてふとめをさましどちらむいてもよぎのそで
▲ぶたれながらもそのてにすがりなぜかじやけんなきにほれた」(二ウ)
▲すてゝみやがれたゞおくものかくさをわけてもたづねだす
▲人にとわれてたゞうつむいてなんといおふと目になみだ
▲ほつとためいきこゝろのたづなゆるすまもなくこのしまつ
▲つとめするみはおきのふねよらくなよふでもくがまさる」(三オ)
▲あい見ての後の心にわしやくらぶればうわきなこゝろはもたれない
▲つきにむらくも花にはあらしまゝにならぬがよのならゐ
▲まぎらそふとのむりざけすごしすかぬおきやくについあたる
▲けいせいにまことないならしろとに成てほれて見せたいぬしひとり」(三ウ)

   三十 東都めいじんかきぬきもん句こゝろいき新版都々いつふし
東都めいじんかきぬきもん句こゝろいき新版都々いつふし
若連
満留吉」(一オ)
▲はるさめにそよと目がさめきくつめびきでおもはずぬらすはまくらかみ
▲おためごかしできれたといわせとふざかろうかにくらしい
▲しよてのあさぎもあいかさなりてこくなりやしつこくなるわいな
▲ういたはなしをしちやいるけれどむねにくがありやわらはれぬ」(一ウ)
▲人のこゝろはかわらぬものときまればじせつをまちもする
▲恋もむじやうにかわらぬうちとさとりすぐしてこのしだら
▲きれておまへはしゆつせをせうがたれをたよりにわしはする
▲のめばたまにはわすれもせうがしらふなわたしにひまはない」(二オ)
▲やりくりがつきりやわたしをまたぶちたゝき〔(コトバ)コウ吉やかぶでかゝあをいじめるのかそんなことはやめにしておいらのうたをきくがいゝよ(そゝり)いまなるかねは三井のかねこゝろはやばせとおもへともねつからさきがいし山であはづにぬれるが夜るのあめ(言)ヲヤ権さんそりやアあみ八けいだの「そうよ「おいらがうちは七けいだからけんくはができる「そりやア又なぜだ〕ぜゝがないからこのしだら」(二ウ)

   三十一 東都めいじんかきぬきもん句こゝろいき新版都々いつふし
東都めいじんかきぬきもん句こゝろいき新版都々いつふし
若連
満留吉」(一オ)
▲はるさめにそよと目がさめきくつめびきでおもはずぬらすはまくらかみ
▲おためごかしできれたといわせとふざかろうかにくらしい
▲しよてのあさぎもあいかさなりてこくなりやしつこくなるわいな
▲ういたはなしをしちやいるけれどむねにくがありやわらはれぬ」(一ウ)
▲こふしたつとめの身でさへやけるしろふとのおまへさんはむりじやない
▲しやくがさしこむもうきゝましたわかればなしはむだなこと
▲みちならぬことじやよそふとおもふちやいたがすいたがいんぐはでぜひがない
▲おたがひにきをしりやむりだとしりつゝぐちをいふと思へばなをかわい」(二オ)
▲ほれてくらうはせうちでするにいけんするとはきがしれぬ
▲むりを手にしてあきさせやうかそんな手でゆくわししやない
▲うちしやせかれるそとではなぶるたよるおまへにやすねられる
▲つらいとつめはつらくはないがしのんでかよふがつらからう」(二ウ)

   三十二 まどの梅みさをどゝいつ
まどの梅みさをどゝいつ 上
馬喰町三丁目
吉田屋小吉」(一オ)
▲むめもやなぎもみなそれ/\にこひのいきぢのあだくらべ
▲じつもふじつとなるみのつらさおくるちや屋にもぎりがある
▲たつをひきとめマアきかしやんせいちにもちつきまつのうち」(一ウ)
▲おくるちや屋でもむねきなしかたあのこによばれてなるものか
▲はるのかすみも三すぢをひくははなにうかれるこゝろいき
▲なごりおしげにみおくるかほへつゆかなみだかあささくら」(二オ)
▲ふるゆきもふむもおしひかふまずは人がとふてくれまひこのけしき
▲花のけしきもふりつむゆきもこゝろ/\のめのながめ
▲どてのさくらをまたよざくらとさけがのりきのさんやぼり」(二ウ)
まどのむめみさをどゝいつ 下」(三オ)
▲このごろはなみだもろひとわらはせぐせがつゐてふさぐもぬしのこと
▲きゝわけがなひと我みでしつてはゐれどおもひきられぬこひのよく
▲はるののにおもひすぎなはおまへのうはきあんじこゝろのつく/\し」(三ウ)
▲とちはもとよりせけんはなをもひろくさせたひこちの人
▲おそまきながらもしんぼうさんせトいふてなみだにむせかへり
▲ゆきのはだへにさくらのめもと月にいくらとうはさする」(四オ)
▲つたかつらからみつくほどおもふてゐれどぬしのこゝろにはちもみぢ
▲ひきしほにこへもかすかなあのはまちどりとふくなるみのうみになく
▲いちのゑんぎのはまゆみおかめはずむてまりのみやげもの」(四ウ)

   三十三 伊呂波しり取どゝ一ぶし
伊呂波しり取どゝ一ぶし 下(ママ)
八丁堀 松坂屋板」(一オ)
わ わたしやこれほど思ふてゐるにかうもじやけんになるものか
か かみやほとけにねがひがとゞきけふのごげんのうれしさよ
よ よいにしのばせやう/\のことであふてかへしてほつとした
た たとへのゝすへ山のおくまでも手に手を取あふてふたりづれ」(一ウ)
れ れいのやぼめがまたしげ/\にうるさいことだよどうしやうぞ
そ そふたゆめ見てついおこされてあとをみたさにはらがたつ
つ つきにむらくもはなにはかぜよぬしにあふよのあけのかね
ね ねてもさめてもおまへのことをおもはぬ日とてはないわいな」(二オ)
な ないてわかれてついそれなりにひとりぬるよのあだまくら
ら らくなせかいにくがいのつとめしばしわすりよと酒ものむ
む むねにしあんはさだめてあれどぐちがこうじてものおもう
う うはきなおまへにしみ/\ほれてわたしやあはびのかたおもゐ」(二ウ)
や やがてふうふといふてはゐれどむねのけむりがあさま??
ま まゝにならぬがうきよといへ?あまりしんきとちやわんざけ
け けさもけさとておまへのうわさあんじすごしてものおもふ
ふ ふかくなるほどおもひがますよはやくゆきたやぬしのとこ」(三オ)
こ こひし/\とおもふてゐた?ゆめじやないかやぬしのこえ
ゑ ゑんのつなかやたよりかありてぬしのところへふみのはて
て ていしゆきどりのぬしよりほかにうはきところかなんのまあ
あ あいのおさいとのむさけよりもふたりねざけのおもしろさ」(三ウ)
いろはしり取どゝ一ぶし 下」(一オ)
さ さいたさくらもみだれりやちる?しんぼうさんせやちらぬさき
き きづよいおかたとうらみつないつおつるなみたのそでのつゆ
ゆ ゆうべあふたにまたかほ見たくふみにおもひをふうじとめ
め めかほしのんでうきなをたてゝまよふふたりがこひのやみ」(一ウ)
み みゑもかざりもなくほれぬいてぬしのことばかりいひくらし
し しのびあふよはみじかふてならぬにくやよあけのかねのこゑ
ゑ ゑきもないことさきぐりをしてぬしをあんじてものおもひ
ひ ひとめしのふははじめのうちよいましやひとめもよのぎりも」(二オ)



京」(二ウ)
《二ウは判読不明箇所多》

   三十四 伊呂波四十八文字しり取文句都々いつぶし
伊呂波四十八文字しり取文句都々いつぶし 上
八丁堀岡崎丁 あづま清吉板」(一オ)
い いつかふたりがめうとにならば手なべさげてもうれしかろ
ろ ろうかづたいのしのびのこひじもはやしれたらまゝのかは
は はたかにんきやうとなるわしがみもみんなおまへがかはいさに
に にくやからすでモウきぬ/\とじつとひきよせかほとかほ」(一ウ)
ほ ほんにおまへもやきもちぶかいおぼへもないこといゝならべ
へ へんなうはさをわしやきくたびにおもひすぐしてぬしのこと
と とをざかるのはすへさくはなよしんぼさんせやちとのうち
ち ちはがこうじてせなかとせなかあけのからすがなかなおり」(二オ)
り りんきせまいとたしなみながらなぜかこゝろがやすまらぬ
ぬ ぬしのこいかとまただまされて出てはみんなにわらわれる
る るすをめがけてくるまをとこもねこのしやうやらぬすみぐひを
を おもひおもはれかうなるからはぎりもせけんもまゝのかは」(二ウ)
伊呂波しり取どゝ一ぶし 下
東清はん」(三オ)
わ わたしやこれほど思ふてゐるにかうもじやけけんになるものか
か かみやほとけにねがひがとゞきけふのごげんのうれしさよ
よ よいにしのばせやう/\のことであふてかへしてほつとした
た たとへ野ゝすへ山のおくまでも手に手を取あふてふたりづれ」(三ウ)
れ れいのやぼめがまたしげ/\にうるさいことだよどうしやうぞ
そ そふたゆめ見てついおこされてあとをみたさにはらがたつ
つ つきにむらくもはなにはかぜよぬしにあふよのあけのかね
ね ねてもさめてもおまへのことをおもはぬ日とてはないわいな」(四オ)
な ないてわかれてついそれなりにひとりぬるよのあだまくら
ら らくなせかいにくがいのつとめしばしわすりよと酒ものむ
む むねにしあんはさだめてゐれどぐちがこうじてものおもう
う うはきなおまへにしみ/\ほれてわしやあはびのかたおもゐ」(四ウ)

   三十五 いろは四十八しり取どゝいつ
いろは四十八しり取どゝいつ 上
玉つねはん」(一オ)
い いつか二人りがみやうとにならばてなべさげてもうれしかろ
ろ ろん?ないぞいいやじやといふがそめてゆくぞいこのしらは
は はだかにんきやうとなるわしがみはみんなおまへがかわいさに
に にくやからすがまうきの/\でしかとだきしめかほと/\」(一ウ)
ほ ほんにおまへはやきもちぶかひおぼいもないこといゝならへ
へ へんなうわきをわしやきくたひにあんじくらすはぬしのこと
と とうざかるのはすいさく花よしんほしやんせよちとのうち
ち ちわかかうしてせなかと/\あけのからすのなかなおり」(二オ)
り りんきせまいとたしなみながらなぜかこゝろかさたまらぬ
ぬ ぬしのこゑかと又だまされてでゝはみんなにわらはれる
る るすを目がけてくるまごとこもしれりやどきやうのさめとこお
を おもひおもまわれかうなるからはぎりもせけんもまゝのかわ」(二ウ)
花見もとりいろは四十八しりとり掛合しんばんとゝいつ 下
両国 玉恒板」(三オ)
わ わたしやこれほどおもふているにかうもじやけんになるものか
か かみやほとけにねがひがとゞきけうのごゑんのうれしさよ
よ よいにしのはせよふよのことてあふてかいしてほつとした
た たとひ野ゝすいやまおくまでもてをとりあふて二人りつれ」(三ウ)

   三十六 いろはしりとりどゞいつ
いろはしりとりどゞいつ 初へん
杉丘画
馬喰町三丁目
吉田屋小吉板」(一オ)
い いつかふたりがめうとにならば手なべさげてもうれしかろ
ろ ろうかづたいのしのびのこひぢもはやしれたらまゝのかは」(一ウ)
は はたかにんきやうなるわしが身もみんなおまへがかわいさに
に にくやからすでモウきぬ/\とじつとひきよせかほとかほ
ほ ほんにおまへもやきもちぶかいおぼへもないといひならべ」(二オ)
へ へんなうはさをわしやきくたびにおもひすぐしてぬしのこと
と とほざかるのはすへさくはなよしんぼさんせやちとのうち
ち ちわがこうじてせなかとせなか」(二ウ)あけのからすがなかなほり
り りんきせまいとたしなみながらなぜか心がやすまらぬ
ぬ ぬしのこゑかとまただまされて出てはみんなにわらはれる」(三オ)
る るすをめがけて来るまを」(三ウ)とこもすこしはきがねをするものを
を わもひおもはれかうなるからはぎりもせけんもまゝのかわ
わ わたしやこれほどおもふてゐるにこうもじやけんにするものか
か かみやほとけにねがひがとゞきけふのごげんのうれしさよ」(四オ)
よ よひにしのばせやう/\のことであふてかへしてほつとした
た たとへ野のすへ山おくまでも手にてもひかれてふたりづれ」(四ウ)
(二編欠)
いろはしりとり都々一 三へん
馬喰町三丁目
吉田屋小吉板」(一オ)
こ こひし/\とおもふてゐたにゆめじやないかやぬしのこえ
え えんのつなかやたよりがありてぬしのところへふみのつて」(一ウ)
て ていしゆきどりのぬしよりほかにうはきどころかなんのまあ
あ あいのおさへとのむさけよりもふたりねざけのおもしろさ
さ さいたさくらも乱れりやちるよしんぼさんせやちらぬさき」(二オ)
き きつよいおかたとうらみつなきつおつるなみだのそでのつゆ
ゆ ゆふべあふたにまたかほ見たくふみにおもひをふうじこめ」(二ウ)
め めかほしのんでうきなをたててまよふ二人がこひのやみ
み みへもかざりもなくほれぬいてぬしのうはさをいひくらし
し 忍びあふよはみじかふてならぬにくや夜明のかねのこゑ」(三オ)
ゑ ゑきもないことさきくゞりをしてぬしをあんじてものおもひ
ひ ひとめしのぶははじめのうちよいまじや人めもよのぎりも」(三ウ)
も もとはたがひのこゝろやすだてよすねずとこちらをむかしやんせ
せ せなかあはせてけんくわもすれどこちらむいたら明がらす」(四オ)
す すゑのやくそくなが/\しいもまつにかひあるきのふけふ
京 けふはめでたくいもせもまなびかはらしやんすなかはるまい」(四ウ)

   三十七 新作こゝろいき文句四十八文字大一座しりとり都々一
新作こゝろいき文句四十八文字大一座しりとり都々一 上
両国屋百板」(一オ)
い いへばくぜつのたねとはなれどよそに花あるふたこゝろ
ろ ろくにはいふまいせけんの人が二度のつとめのこのしらは
は はかないすがたとわしやなりふりもみんなたれゆへぬしゆへに
に にくいしうちとうらみつないつなみだかくしてまたしんぼ
ほ ほぐにはなるまいあのことのははすへのすへまでじやうくらべ」(一ウ)
へ へんなゆめ見てふとめをさましおもいすごしもぬしのこと
と とふざかりやこふもじやけんとわしやなくばかりおんなごゝろでせまいぐち
ち ちかいたてたよおもわぬ人にかいたきせうもときのぎり
り りかいりづめでこいじがなろかこうなりやいきじできれはせぬ
ぬ ぬかにくぎうつおへやのいけんむだなことだよそいとげる」(二オ)
る るらうさせたもみなわたしゆへたてづはなるまいぬしのかを
を をつなはづみからついのりがきていまじやかへらぬあすかがわ
伊呂波四十八文字しり取心いき都々一 下
わ わけはこふだとこゝろのそこをゆふてきかせちやわるいのか
か かみにねがいもほかではないがはれてあいたいたゞひとよ」(二ウ)
よ よもすからねやのひまさへつれなき人とおもいだしたるうたがるた
た たまにきづとはおまへのことよすこしはしんぼうしておくれ
れ れんがはいかいうたよむひともまよふちやとけまいこいのなぞ
そ そえるゑんならいくちよかけてともにじせつのすへをまつ
つ つまづく小いしにあと見かへりてにくいながらもなでるむね」(三オ)
ね ねづみなきしてついだまされてぬしのてくだにかゝるわな
な ながめ見あかぬつきよもやみとよわりやすいはあきのそら
ら らくなむかしにさてひきかへていまはかへなきみをくやむ
む むすぶいづもでむすばぬゑんかあふたしよてからこのくろう
う うきなたゝずのまもりがあらばかけてうわきがしてみたゐ」(三ウ)
新作伊呂波四十八文字大一座しり取都々一 上之巻
こゝろいきもん句
両国屋百板」(四オ)
ゐ ゐやなかぜにもなびくはやなぎして見りやくがいはつらいもの
の のきばづたへのつばめでさへもめうとぐらしでいるものお
お およばぬことじやとわしやしりながらそふて見たいはこいのよく
く くみわけて見ればしうとが何にくかろういとしいをまいをうみのおや
や やくじやなけれどたらわぬわしをむまくだましたくちぐるま」(四ウ)
ま まゝにならねどこになるからはあさいこゝろのおよぶたけ
け けさのわかれがわしやきにかゝるつがいはなれたこのびやうぶ
ふ ふかくなるほど人めのせきをこへてゆきたやぬしのとこ
こ こゝろうちとけやう/\ねたらもはやあけがたとりのこえ
え えんのあさせとわしや白波のおとにもきゝたいふみのつて」(五オ)
て てなべさげてもそうきでいるにいまのくがいがなんのまあ
あ あはぬむかしにくらべてみればたよりをまつよのじれつたさ
いろは四十八文字しりとり心いきどゝ一つ 下
さ さへたつきよにじやまするくもがあるかこよひのむなさわぎ
き きれてみれんで又おもいだし人にいわれぬそでのつゆ」(五ウ)
ゆ ゆきつもどりつしあんにあまりねぐらさだめぬむらすゞめ
め めいかこうさへかほみめぐりとむりなねがいのかみだのみ
み みづにうつりしそのつきかげよとゞかぬこひじにみをやつし
し しのびあふよはふさいたかほゝみせてうきなのたゝぬちゑ
ゑ ゑんもゆかりもないしよへせじをゆうてつくろうけうのしゆび」(六オ)
ひ ひんすりやどんすのやくとはいへどぬしにはしかけもかんざしも
も もつれかゝりし此くろかみをとけてゆうきにならしやんせ
せ せけんはれてのわたしが人といふをたよりに日をくらす
す すへにむすばるゑにしのあやかとけてうれしいきのふ京
京 京はめでたいさて四かいなみはれてふうふのわびずまい」(六ウ)

   三十八 新版いろはうた四十八文字あんだそれよしこのふし
上文句新板いろは哥四十八文字あんだそれよしこのふし
八町堀七軒丁しんみち
角伝板」(一オ)
▲いのちかけてもそはねばならぬひとにいわれし事がある
▲ろんはないそへおまゑのうわさしてはわたしはなぶられる
▲はらのたつまゝすねては見れどあとであやまるほれたなか
▲にくひなからもぢうづをゆふもみんなおまへの身のためよ」(一ウ)
▲ほれてほれられてあいほれとやらしぬとわかれがなけりやよむ
▲へるなしうちとしわんすけれどそこがしよしんのあとやさき
▲とめてわるいとしりつゝけふもとめてきかねはほれたぢやう
▲ちゑのない子にわる知へつけてわしをじらして嬉しかる」(二オ)
▲りんきするよにいわんすけれどいわねばわたしが身のつまり
▲ぬしをしのばせのきばにたゝせうちのしまつできがもめる
▲るすをつけこみしのんでくるはうまひやうても身にならぬ
▲をやをふりすてこきやうをはなれぬしをしとふてきたものを」(二ウ)
新板いろは哥四十八文字あんだそれよしこのふし
角伝板」(一オ)
▲わしがわるくはあやまるほどにすねずとこちらをむかしやんせ
▲かわらしやんすなおまへのこゝろうわきされてはわしやたゝぬ
▲よこくずまひもおまへがたよりそれにしやけんな事ばかり
▲たてひきつくならなまづめもはなすほれりや五本のゆびもきる」(一ウ)
▲れいのかんしやくおまへの気しつしりつゝいうのがわしがむり
▲そつとしのばせ二かひへあげて玉にあふ夜のみじかさよ
▲つよひ事をばゆうては見れどぢきにあやまるほれたなか
▲ねんのあくのをゆびおりかぞへはやくいきたやぬしのそば」(二オ)
▲なまじなま中あわぬがましよあへばみれんでおもひだす
▲らんきものじやといわんすけれどわたしやぬしゆへきもちがう
▲むすびあふたるふたりが中をさくはきじんじやおやぢやない
▲うそじや/\といわんすけれどうそもつのればぢつになる」(二ウ)
新版いろはうた四十八文字あんだそれよしこの 中上
八町堀七軒丁
角伝板」(一オ)
▲ゐやなつとめもおまへがたよりたまにやなさけもかけさんせ
▲のむをとめたがわたしかむりかのめばおまへはしだらなし
▲おもふおまゑをひとりでねかしいやな御客をわたしやつとめ
▲くぜつするまにつゐよかあけたわたしやかゑしちやきがすまぬ」(一ウ)
▲やめてくんなよつきやひ酒をつのりやわたしが身のつまり
▲まゝにならぬをしやうちてほれてまゝにしやうとはぬしのむり
▲けさもけさとてない所へよばれとてもよぶにはいのちがけ
▲ふでを手にもちまきがみだしてぬしの名をかきわらはれる」(二オ)
▲こゝろさだめてわたしはよべどぬしがうわきで気かもめる
▲えてにほをあげおまへのうわきわしをおもわばやめなんせ
▲てれんてくだととめたはむかし今は女房よこちのひと
▲あいそつかしはわたしはきらゐならばすべよくわかれたや」(二ウ)
四十八文字 中下
▲くぜつとぎれてもふひけすぎよかみもみだれて
手まくらでやつれはてたよすや/\とねひりし女のかほつく/\とうちながめ引
かわひやくろうヲさせたやら
角伝」(三オ)
▲さつしくだんせわたしがこゝろぬしをたよりにこのつとめ
▲きしやうせゐしはほぐにもなろが四本半にはたれがした
▲ゆふべわかれてかゑして見たがこよひあわねば気がすまぬ
▲めもとはなもとこの子の顔を見れば見るほどおもひだす」(三ウ)

   三十九 東都一流与志好野ふし
東都一流与志好野ぶし
亀村卯一」(表紙)
(空白)」(見返し)
いつかふたりがめうとにならばてなべさげてもうれしかろ
ろくにおかほもしらないわたしおつなごゑんてぬしのそば
はだかでくらすはもとよりしようちみんなおまへをかわいさに
にくいしうちも人めのせきにそれをいふのはぬしのやぼ」(一オ)
ほんにおまへはやきもちぶかひおぼへもないこといゝならべ
へんなうはさをきくたびごとにおもひすごしてぬしのこと
とうざかるのはすへさく花よしんぼしやんせちつとのうち
ちはがかふじてせなかとせなかあけのからすがなかなをり」(一ウ)
りんきせまいとたしなみながらなぜかこゝろがやすまらぬ
ぬしのこゑかとまただまされててゝはみんなにわらはれる
るすをめがけてそとくるまぶをしのぶこゝろのうれしがを
をもへおもはれかうなるからはぎりもせけんもまゝのかわ」(二オ)
わたしやこれほどおもふてゐるにこふもじやけんになるものか
かみやほとけにねがへがとゞきけふのごげんのうれしさよ
よいにしのばせよう/\のことであふてかへしてほつとした
たとへのゝすへ山おくまでも手をとりかはして女夫づれ」(二ウ)
れへのやぼめをだましてかへしおまへにそひねはつみなうそ
そうたゆめみてついおこされてあとがみたさにはらがたつ
つきにむらくもはなにはかぜよぬしにあふよのあけのかね
ねてはかんがへおきてはふさぎあはねきやおもひがますわいな」(三オ)
ないてわかれてついそれなりにひとりねる夜のあだまくら
らくなせかひにくがいなつとめしばしわすりうとやけでのむ
むねにしあんはさだめてあれどぐちがかうじてものおもう
うはきなおまへについほれこんでわたしやあわびのかたおもゐ」(三ウ)
ゐかにわたしがつとめのみてもこふもうたがふものかいの
のやまこへてもおまへとふたりそふとおもふているものお
おもひつめたるふたりのなかはわすれまへぞやすへながく
くるか/\とまつみのつらさあへばまじめではづかしや」(四オ)
やがてふうふとおもふてゐれどむねのけむりがあさまやま
まゝにならぬがうきよといへどあまりしんきとちやはんざけ
けさもゆふべもおまへのうはさあんじすごしてものおもふ
ふかくなるほどおもひがますよはやくゆきたやぬしのとこ」(四ウ)
こいし/\とおもふていたがゆめじやないかへぬしのこえ
えんのつなかやたよりがありてぬしのところへふみしたて
ていしゆきどりのぬしより外にうわきどころかなんのまあ
あいのおさへとのむさけよりもふたり手ざけのおもしろさ」(五オ)
さいたさくらもみだれりやちるよしんぼしやんせやちらぬさき
きがねつくしてしんきのくろうおつるなみだのそばにつゆ
ゆふべあふたにまたかほみたしふみにおもひをふうじこめ
めがをしのんでうきなをたてゝまよふふたりがこいのやみ」(五ウ)
みへもかざりもなくほれぬいてぬしのことばをまちくらし
しのびあふよはみじかふてならぬにくやよあけのかねのこゑ
ゑきもないことさきぐりをしてぬしをあんじてものおもひ
ひとめしのぶははじめのうちよいまじや人めも世のぎりも」(六オ)
もとはたがひのこゝろやすだてよすねづとこちらをむかしやんせ
せかれなぶられわしやつとめのみこよいもひとりでなきあかす
すいたおまへと江戸おふざかでせたいもちたいきのふ京
京とめでたくいもせのまなびかわらしやんすなかわるまい」(六ウ)

   四十 都々一
都々一 二編
馬喰町三丁目
吉田屋小吉板」(一オ)
れ れいの野暮めがまたしげ/\にうるさいことだよどうしやうぞ
そ そふたゆめ見てつひおこされてあとをみたさにはらがたつ」(一ウ)
つ つきにむらくもはなにはあらしぬしにあふよのあけのかね
ね ねてもさめてもおまへのことをおもはぬひとてはないわいな
な ないてわかれてつひそれなりに一人りねるよのあだまくら」(二オ)
ら らくなせかいにくがいのつとめしばしわすりよとさけをのむ
む むねにしあんはさだめてあれどぐちがこうじてものおもう
う うはきなおまへにしみ/\ほれて」(二ウ)わたしやあはびのかたおもゐ
ゐ ゐかにつとめのわたしぢやとてもこうもうたがふものかいの
の のやまこへてもおまへとふたりくらそと思ふてゐるものお」(三オ)
お おもひつめたがふたりのいんぐわまゝにならねばつれてゆく
く くるか/\とまつ身のつらさあへばわかれのまたつらや」(三ウ)
や やがてふうふといふてはいれどむねのけふりがあさまやま
ま まゝにならぬがうき世といへどあまりしんきとちやわんざけ」(四オ)
け けさもけさとておまへのうはさあんじすごしてもものおもふ
ふ ふかくなるほどおもひがますよはやくゆきたやぬしのとこ」(四ウ)