都々逸資料紹介

菊池真一

一 『都々一葉うたあだくらべ』(幕末刊か)

とゝ一はうたしん内入」(表紙)
都々一葉うたあだくらべ
雪すみ作
国信画」(見返し)
〔都々一はうた〕あだくらべ序
花になく鶯のうたひ女水にすむ川面の座敷にうたふをきゝてはをとこをみなの心もうかれ目に見られぬお二階のお客もをどる其ひとふしのあだ文句諸大人の」(序オ)
口ずさみを其まゝこゝに書集てあだくらべと題して梓にゑることは田舎そだちの野夫鶯蛙面の小丁稚に至る迄も花のあしたの居つゞけに水調子の爪引いきな世界をしらしめんとての業なり
玉?園雪住誌」(序ウ)
鳥かげ
(三下り)鳥かげにねづみなきしてなぶらるゝこれも心のうさはらしぐちがのませるひやざけもしんきしんくのアヽしやくのたね
だてもやう
(二上り)わしがサア国さで見せたいものは昔しや谷風いまだてもやうゆかしなつかしみやぎのしのぶうかれまいぞへ松しまほたるしよんがへ」(一オ)
二たせがは
(本てうし)うそとまことのふたせ川だまされぬきでだまされてすゑはのとなれやまとなれわしがきみゆゑならば三ツまた川のふねうちおもひたけを御さつし
君は今
(二上り)きみ今ごろこまがたあたりないてわかれし山ほとゝきす月のかほ見りや思ひ出す

あたはわかれのかねてはしれどけさのきぬ/\いつよりつらいのこる袖のかわすられぬ」(一ウ)
もとうた
(本てうし)あだなゑがほについほれこんでつまこうきじのほろゝにもちひろのふみをかりがねのことづてたのむつばめのたよりうそならほんにかほとり見てとはがひのはだにいだきしめそれなりそこへとまりやまうれしいしゆびじやないかいな」(二オ)
あだなゑがほ
(本てうし)ういたすがたについほれやすくおしのはいろにまよひきてなみのうね/\うきねどりそひふすかもめのめうとづれこうりし夜半をあたゝめられてあたゝめかへすぬくめどりよすがらうれしなくちどりこがるゝはづじやないかいなア」(二ウ)
もんく入どゝいつ
ひと目おゝけりやついそなたにも〔(しん内)おもいもふかき川竹のながれよるべもさだめなき〕こゝろじやけんにあたるぞへ
そでからおちたるふみとりあげて〔(せきの戸)これこのやうにはじめからきせうせいしをとりかはしふかいおかたがありながらかくしておいてまたわしに〕いろよいへんじもあきれきる」(三オ)
もとゆひのきれてしまへば根も葉もないが〔(?木やの段)そりや聞へませぬ才三さんおまへとわたしが其中はきのふやけふの事かいなやしきにつとめたその内にふつと見そめてはづかしい恋のいろはをたもと〕きけばきゝ腹からがたつ
月のまるさと恋路のみちは〔(ときは津)ちいさいときからおまへにだかれ手ならいせいといわしやんしてお手ほんかいてもらふたがいろのいろはのお師匠さん〕どこのいづくもおなじこと」(三ウ)
はるかぜにそよとあがりしあのとんびだこ〔(むしうり)どうでにようぼにやもちやさんすまいわたしばかりがほれてゐてうそのへんじをまことゝおもひ〕ひとのしやくりにやのりはせぬ
ゑほうまいりに初水をかけて〔(きよ元梅のはる)はるげしきういてかもめのひいふうみい〕よふて竹やのふねをよぶ」(四オ)
かわすきしやうはほごにはせぬと〔ひよつとおくのきやくがいきなやつでそなたのきがかはらふかと〕いひなますほどわすられぬ
おもひきれとはむかしのことよ〔(ほり川の段)そりや聞へませぬ伝兵衛さんおことばむりとは思はねどそも逢かゝるはじめよりすへのすへまで云かはしたがひにむねをあかしあいなんのゑんりよも内証のせわしかれてもかんにきぬほんの女夫とおもふもの〕おもひきられるぎりかいな」(四ウ)
人のうわさにせけんもせまく〔(らんてう)おまへのそふしたかんしやくはつねのことゝはいひながら四ツ谷ではじめてあふたとき〕いまのおもひをかくしづま
かほでしらせて目もとでさとり〔(とみ本おしゆん)見てみぬふりのせなとせなおとこのかみをかんざしでかきなでながらこゑくもりそりやすげないぞ白ふぢさん源太さんいかにせきとりさんじやとてちからばかりか心までそのよにつよいものかいな〕ばんにあをふとはむねとむね」(五オ)
かた事いふたるやぶうぐひす?みがきあげれば仲の丁
泣もじれるもふさぐもおまへ是がくがいの一二三
ふとした事からつひのりが来て雨のふる夜も風の夜も」(五ウ)
あふた初手から身にしみ/\と〔(???)四ツ谷ではじめてあふたときすいたらしいとおもふたがいんぐわなゑんのいとぐるまめぐり/\ておふやまのせきそん様のひきあはせ〕こらへじやうなくなつかしや
おまへのうは気をしりつゝほれて〔(紙治)なかしやんせ/\そのなくなみだがしゞみ川へながれて小春さんくんでのむはいな〕りんきするのもぬしのため」(六オ)
よそにまつ身のあるとはしらず〔(ふぢかつら)はなさそふてうはかすみののべをまつ日かげのきゞははるをまつ〕わたしやこがれてぬしをまつ
おもふわたしにおもはぬおまへ〔(朝がほ日記)又も都をまよひ出いつかは廻り逢坂の関路をあとに近江路やみのおはりさへ定めなく恋し/\に目をなきつぶしものあいろも??の陸にさまよふかなしさは〕いつかおまへに大井川」(六ウ)
実と真事で咲たるはなは仇なあらしじやちりわせぬ
便りや有かと聞れる度に捨られましたといふつらさ
煙草のむさへついうか/\と主のまねしてわらはるゝ」(七オ)
こちの黄菊をさきや白ぎくよとゞかぬ苦ろうを作りきく
今は年季が永いといふが月日の立のわはやひもの
屏風の中をば退ひて見たら足が四本でちくせふめ」(七ウ)
主をおもへば照日もくもるなぜかおまへはこうだらう
今朝の嬉しさ袖引雨にぬれて匂ひし菊の花
あはぬつらさに手前の文をかみとおもつてかけまのり」(八オ)
ふいと目につくたがひのいんぐわゑんはいなものあじなもの
夢にみるよふじやほれよがうすひ実にほれたらねぶられぬ
雨のなじみの客人よりも雪の初会がたのもしい」(八ウ)
四角なおまへのほれたもゑんよ丸くせたいがして見たい
わたし計にくろふをさせて末に手切もよく出来た
およそ世間にせつないものはほれた三字に義理の二字」(九オ)
来てはちら/\おもはせぶりめ今日もとまらぬ秋の蝶
内じやもてるが遊びじやもてぬ女郎買をばやめにした
爪びきの心意気からふとした縁で今は人目をしのび駒」(九ウ)
切てしまふとがんがけすれどあいそづかしの??がない
泪ふき/\???くだんをかけぢの神だのみ
異見されゝばたゞうつ向てきひて居ながらおもひだす」(十オ)
ぶてばそなたはじやけんといふがのろけてそなたをさすりやろか
時鳥/\とてつひ夜があけた主を待夜も其通り
りんきせぬのは女の道とうは気したさの得手かつて」(十ウ)


二 『げいしや都々逸』(幕末刊か)

片腕にたらぬわたしを是此やうにたゝいて手柄さんすのか
妻子あるのが今更しれて二世といゝしもみづのあわ」(十五オ)
先が曲て出るならわしも意地で車を横へ引
うそも真言もしうちでしれる口はどうでもきけるもの」(十五ウ)
いけんするのはしんみの人と思ひながらもうらめしい
夫程にくけりや口かづきかずいつそ殺して下さんせ」(十六オ)
人の異見が成程今は胸にこたゆる事ばかり
知ぬわたしをなぜ惚させに来たのがおまへのあやまりサ」(十六ウ)
見捨られたか雁がね一羽たのむ目あてに啼て行
譬へ二階はせかれたとても軒ば三尺いつもやみ」(十七オ)
夕べへだてし霞が今朝は晴て朝日に匂ふむめ
水ももらさぬ中みておくれ外へうつらぬおけの月」(十七ウ)
さみせんの糸より細き芸者の身でもはりといきぢで切はせぬ
人は鳥渡見て一寸惚するが私や能見てよくほれる」(十八オ)
なげた枕につみとがないがなげにや手枕させられぬ
二世も三世もそあふたいわぬ此世でそいさへすればいゝ」(十八ウ)
姿は見せずに一声聞し心憎さよほとゝぎす
実と情の種さへ蒔ばはなれまいとの花がさく」(十九オ)
あすはしらねどきのふはむかしけふは命にかへてあふ
逢た今宵の二人が中は価千金五わりまし」(十九ウ)
夢のよの中ゆだんはならぬ枕ともなるたばこぼん
こその浮世の実のひとにめぐりあふまでする苦労」(二十オ)
夢も結ばぬはなしのうちに情しらずの明がらす
兎角浮よは侭にはならぬほどのよい人実がない」(二十ウ)
雲りがちなる心の闇晴て逢よの月をまつ
寐がほに見とれて枕にすがり惚れてもよいかとひとり言」(二十一オ)
二世や三世じやまだそいたらぬ千代も八ちよも万代も
い気な男に浮気ななぞをかけてといたるしゆすの帯」(二十一ウ)


三 『華袋 竹の巻』(幕末刊か。一荷堂半水編)

華ふくろ 竹の巻
一荷堂半水編
貞信画」(表紙)
(口絵)
(口絵)
華袋 竹の巻 目録
うかれよしこのの部
流行端歌百々逸之部
うたいりどゞいつの部
東都歌度々一之部
しんさくよりぬきおゝつゑぶしの部
佐和理トヽ一
はやりうたいろ/\
座舗俄
手づまのたねいろ/\
輯編 一荷堂半水
画図 長谷川貞信」(目録)
明す中にも苦はさせまひとおもふてちつとは嘘もつく
おもひ染たるそのときからもし案の外とはおもやせぬ
つれなくかへせばこがるゝ人に逢れぬうらみがむくふやら
ぐ知もいふまひモフこのうへはじせつまつより外はない
万事おまへがはすはなゆへにすへをあんじる切はなれ」(一オ)
待て下んすそのしんせつでおりにや一度もきさんすりや
おまへの得手物口鉄鉋ではなしや立づく人はない
夜さへ短かくゆめさへろくに見たる間もなく明のかね
仇とけ女にこのかよひ路はこれもなんぞの因業だろ
今宵逢たらまたしばらくは陰の蕩気(のろけ)で日をおくる」(一ウ)
悪性男もまもつて居れば浮気もちつとはやむであろ
添て見たればうはきもなくて今迄した苦が馬からしひ
わけも聞ずと只やみ雲にくらひなぞとは曲がなひ
ほれてくれたでツイふんべつの狂ひだしたであひとげる」(二オ)
うはきどころと看ばんかけて色の問屋の仕て見たひ
およしなさいよおまへのしだら浮気おしへた神もなひ
無理に呑せてその二日酔さすも名残がおしひから
きれる覚悟で私や惚はせぬたとへうわきで出来たとて
弁才天ともおもふて嫁々にして見りや胸きな鬼子母神」(二ウ)
いるかいぬかは寝て見た上とことばすげない秋の蚊帳
蛇に程よく巻せる雉子もいづれ切気のはらだくみ
かぶせかけたる雪には梅もなんの冠りがふらりやうぞ
男猫さへ膝には乗ぬほどにおまへをおもひつめ
直な竹でも間垣となれば人がとやかう節つける」(三オ)
ひよんな流れがあふ瀬と成てわたりそめたよ葭屋ばし
つとめする身はアノにはとりも鳴てほしさの夜がおほい
宵の口絶を今朝我胸にたゝむふとんにうき思ひ
主の浮気に此鉄漿筆をもたぬむかしがなつかしひ
面も二三度むかれた栗はうまく喰せて味にせる」(三ウ)
うはき心にそゝなかされて〔(○四季の春 二上り)はるはこづゑに香をとめて咲うめが笑へばアレやまわらふにこ羽子いたのおともよやひとごにふたご見わたすかたへむつまじふふきのしうとめよめ菜を連てはな/\しさのやまめぐり〕」(四オ)まよひましたよいろの道
せつない泪に引とめられて〔(○今朝の雨に 本てうし)けさのあめにしつぽりとまた居つゞけのながひ日のみじかふくらすとこのうち髪を引さき眉毛をかくしもうしこちの人へわたしがかへ名はなんとせうアレ寝なんすな起なんしあけぼのならでくれのかね〕聞もしんきなうらみ言」(四ウ)
しのびながらも笑顔をふくみ〔(○夜ざくらや 三下り)夜ざくらやうかれがらすかまへ/\と花の木かげに誰やらが居るわいなとぼけさんすな目ぶきやなぎの風にもまれているわいなヱヽふうはりとおふさそうかいなサアそうじやいな〕ほかへきのちる筈はない
どふで一度の苦労はせうち」(五オ)〔(○かんしやうぜうは 三下り)菅丞相は筑紫の国へながされてうしに引れて安楽寺へおともまふすは白太夫平馬が首は飛うめでいかりの眼色鳴神はなるかいななるはいなそこからにらみやしやつても都のかたへは届ぬ〕むりな願ひをかけた中
しん中立してアレ見やさんせ〔(○同かへうた)ゆび切かみ切すとんとお」(五ウ)まへにほれましたそれにこい目がかんしやくにござんす侭の川とはながれのみ抱て寝たがふしぎなるつとめてごんすとやつておけやるわいなやるわいななんでもやるのがよいわいナよい/\/\/\よいやサ〕この上たらねば命でも
お前がくるへばわたしはやつれ」(六オ)〔(○咲た桜の木 三下り)さいたさくらの木に駒のたづなをしつかりほどけぬやうにくゝりつけ駒が冠ふりや見事にさいた桜の花がちるはなちる見ごとに咲たさくらの花がちる見事にさいたさくらのはながちる〕やめてくだんせうはきざけ
千話にもつれて物をも言ず〔(○同かへうた)すいたどふしが背なとせ」(六ウ)なとをしつかりはなれぬやうにいだきしめすねてあちらむきやせなかでさすり気やすめいふてのろけかけ早あかつきの鐘の音にびつくりゆめさめわかれをおしむいもせ中いちや/\いふて是も浮世のゆめかいな〕ほんにくやしひ別れする
すいな色かに迷ふもむりか〔(○梅は北野の 三下り)うめは北野の天神さん」(七オ)の御神楽見ごとにさいたとせ咲たそのうめどふじやいな東風がふくにほふそのかがわしやうれしふたりが中は二せも三せもかはりやせぬ〕うき名立たる中ぢやもの
縁のき綱に身を引されて〔(○登り夜ふね 二上り)のぼり夜舟はかゐじやろじやとて梶をとつたゑ佐太や牧かた淀水にくるまはくる/\と伏見へ」(七ウ)つくへヲヽイ/\脚半の紐じやまひとつじや三尺帯じやまひとつじや笠じや簑じやシテあるくのじや〕こふなりや野山の里迄も
まさかすげなひそ振もならず〔(○どふじやあいかと 本てうし)どふじや逢かと座敷でとわれこちや此頃はと眼になみだうき世」(八オ)の義理にからまれているはひなつらひしんくをするわいな〕なみだ隠してわらひ顔
むごい仕打になを意路立て〔(○おもひ込だる 本てうし)おもひこんだるわが恋は先が邪見で切こうじようたとへきれてもきれはせぬ思ひにおもふた人じやものまだわたしや未練があるわいな〕そりやおかぬよ死るとも」(八ウ)
やがてあふ身のそのうれしさに〔(○めぐる日や 本てうし)廻る日やはるがちかいとて老木の枝に若やぎて其しほらしや/\かほりゆかしと待わびかねてさゞなきかける鶯のきてはざこ寝をおとしつゝさりとは気みじかな今帯しめてゆくわいなほうほけきやうの人さんじや〕こゝろそはつく事ばかり
うはき聞たびヱヽ腹のたつ」(九オ)〔(○露は尾ばな 本てうし)つゆは尾ばなと寝たといふ尾ばなは露とねぬといふあれ寝たといふ寝ぬといふをばなはほに出てあらわれた〕にくひおまへのうはきづら
義理も人眼も何いとやせぬ〔(○ほれて通へば 三下り)ほれてかよふになにこわからふ今宵も逢とやみの夜道をくよ/\と先やさほどにもおもやせなひ」(九ウ)にこちやのぼりつめあはう/\となくからす〕まこと明した中じやもの
もつれさせたり又とかせたり〔(○柳よ/\ 三下り)やなぎよ/\すぐなる柳いやな風にもなびかんせ(ことば)あちらへゆけば浅くさのくわんのんこちらへゆけば芝の神めい/アヽどちらへいたらよからウやら」(十オ)しあんばし(ことば)なにはともあれちよきで来なさイ〕にくや心がむすぼれる
そめた恋仲また覚るかと〔(○紫の 三下り)むらさきのゆかりの色やかきつばた染てなまなかくよ/\とあけくれこがれてくらすヱ〕色でこの身をやせさせる
後前思ふてあわずにいれば〔(○同かへうた)」(十ウ)世の中に義理ほどつらい物はない惚て生中くよ/\と明くれこがれてくらすヱ〕やつれすがたにさとられた
またの約そく指折かぞへ〔(○いつしかに 二上り)いつしかに君を待乳のやま/\こへてかよふ五十崎駒がたや千鳥かもめの心があらばしらひげさんへしん実しんからぐわんかけてちよつとおかほを見めぐりならばうれしの森であろぞいなそれ/\それも」(十一オ)そうかいな〕うれしおもひに鼠なき
土手の夜風の身に染迄も〔(○同かへうた)衣紋ざか今宵くるわのあふ瀬の首尾をはしばのあめにしつぽりときみは山谷の三日月さんよ真実しんから願かけて二ツまくらでたのしむならばうれしのもりじやあろぞいなそれ/\それもそふかいな〕」(十一ウ)かよはさんすりや実意づく
ふさぎつめてはおもひの色に〔(○高尾 三下り)もみぢばの青葉に茂る夏木立はるはむかしになりけらし世わたる中のしな/\にわれは親はらからのためにしづみし恋の渕うかみもやらぬ流れの」(十二オ)うき身たばこのんでも煙管よりのどが通らぬ薄けぶり泣てあかさぬ夜はとてもなし人のながめとなる身はほんにしんくまんくの苦のせかゐ四季の紋日はをぐるまや〕めぐりあふ夜をたのしみに
いろといふまもしばしの中よ〔(○ちるはうき 三下り)ちるはうきちらぬは沈む紅葉ばのかげは高尾かやま川の水のながれと月」(十二ウ)のかげ〕かわるならひのやるせなさ
たより嬉しひ今よいの首尾に〔(○心関屋に 本てうし)こゝろせきやにかわずが笑ふサツサそこでそふじやヱ一人寝がちのたがまくらばし月がないたかほとゝぎす早瀬にさほさす竹いかだ隅田に千鳥のアレはし場じや夜の雨〕ぬれて二人が肌とはだ」(十三オ)
かくし立すりや猶気がまはり〔(○見たいな/\ 二上り)見たいな/\ふ箱の内をのぞいて見たれば玉手箱あけて見たれば文ではなふておつぼねさんの大事の/\夜るのもの〕ひよんな所をさぐりだす
そつと深山で咲せし花を〔(○同かへうた)見たいな/\吉野の桜のぞいて見たれば花ざかり折て見たればナ花では無」(十三ウ)て山ぶしさんの大事の/\鼻のさき〕すかんやつめに臭(かぎ)だされ
おもひ込だるわたしが願ひ〔(○どふぞかなへて 二上り)どふぞかなへて下さんせ妙見さんへぐわんかけて参る道にもその人にあいたい見たいおもへどもこつち計りで先やしらずヱヽしんきらしひじや」(十四オ)ないかゐな〕先へとゞかばいのちまで
野方な人でも実意にや惚る〔(○さいとう 本てうし)斎藤太郎左衛門ちよつと/\あいたいことじやとナアるす/\/\どつこいた隣にかさりとはあいたいナあいた見たさは飛立計り籠の鳥かやうらめしや首尾を見合せそゝりぶし宵にやきもせで夜なかにやたてどこの誰めと」(十四ウ)しげるやらさりとはつれない君ゆへならで茶だちしほだちおさめだちさか/\/\さいのわたし守ちつとぬるいじやないかいな〕すいは浮きでたよりない
おもひかなふて身侭なくらし〔(○うきよ小路 三下り)うき世小路にうきよをのぞく浮世のほかの世帯して木具で飯くうにしき出の茶碗はしがみは旦那さんのし乙子の朔」(十五オ)日はをぐら野なすびは重家からあくおけがヱヽ/\/\/\わしや気にかゝるアヽ/\/\うきよじやわいな/\姓はなふても玉のこし〕きがねぐらいはなんのその
ひとりに誠が立たいばかり〔(○今宵忍ぶなら 本てうし)今よいしのぶなら笠きて簑きてしのばんせひとがとがめたら竹の子ほりじやとしのばんせ〕せけんで嘘をばつくつらさ」(十五ウ)
のせるおまへに私やのるきなり〔(○川かぜに 二上り)川かぜにすだれまくりてふねの中仇なすがほにあらひがみちよつと松ばにつげの櫛さそかさそまいかサヽそこらはどふじやいなヱヽさすきじやヱ〕まゝよながれにまかす身は
せめてゆかしひうつりがなりと」(十六オ)〔(○引すぎに 三下り)引すぎに間夫をかへしてたゞぼうぜんと硯ひきよせかくふみの身にしみ/\とあけのかね二かゐをまはらしやりませうとかなぼうひく〕こゝろだよりに寝るつらさ
うきよ半ぶん月夜はあれど〔(○かたみぐさ 菊のゝついぜん 二上り)くらきよりくらきをてらすとうろうのおのが迷ひにその人を切子も今はうわ」(十六ウ)さのみ世の口のはに種なしと菊野があとのかたみ草〕やみと迷ふもおまへゆゑ
しらぬ他国へ手を引あふて〔(○越後の国の 二上り)ゑちごの国の角兵へじ子くにを出るときやおや子づれしゝをかむつてでんぐりがへつてちよつと立まするおやぢやまじめでふゑをふく〕苦労するのも承知づく」(十七オ)
去ばいなんせサア此まゝで〔(○くろい羽をり 三下り)黒いはをりはヱ/\ヱヽこゝにある〕なんのかへそゞいつまでも
いまさらおまへに捨られるとは〔(○菊の露)おもわじなあふはわかれといへどもぐちに庭の小菊のその名にめでゝ昼はながめてくらしもせうが夜る/\ごとにおく露の露の命のつれなやにくや」(十七ウ)今はこの身にあきのかぜ〕しらずなびいた口おしさ
せけんはらしてあふたるからは〔(○かよふかみ 本てうし)田ごとにうつる月かげらで夜ごとにうつすまくらのかづの中に粋ありぶすいありすまぬ心にすむ月の何がしんきのたねじややら尻めづかい」(十八オ)を余所にしてまかせぬ首尾をわけあるやうに愚ちなせりふも恋のじつすへは野となれやま水の神にゑにしをまかせなん〕どふぞ切ずにいつまでも
それと聞ほど尚あいたさに〔(○ひとつ夜ぎ 三下り)一間へだてゝ恋のやみかこゐといふもつたわれて見てもふかいはうらやましぬれてちようづの水くさきはなれぬ中じやあるま」(十八ウ)ひけれどなんのかのなきひとつ夜着〕しゆびも程よい四畳半
くらうしたのもむかしと成て〔(○扇づくし 二上り)花のいろはうつりにけりないたづらにこれ見よがしとでんちうでたがいにぬれし袖あふぎかほはひあふぎあこめせん名もいわもとのみやしろにくぜつ扇の吉例扇なか四座あふぎ八重ひとへ」(十九オ)千代の舞づるうつし絵やあふぎのかづはつきせねど一家ひらけばあめがしたみなはるなれやよろずよもなをあんぜんぞ目でたけれ〕今はうれしく添た中
にくひうらみはそりやあはぬ先〔(○ゆかりの月 本てうし)うしと見しながれのむかしなつかしやかわひおとこにあふさかの関よりつらひ世のならひおもはぬひとに」(十九ウ)せきとめられていまは野ざわのひとつ水すまぬ心の中にもしばしすむはゆかりの月のかげ忍びてうつすまどのうち広いせかゐにすみながらせまふたのしむまことゝまことこんなゑにしが唐にもあろか花さく里の春ならば雨もかほりて名やたゝん〕」(二十オ)かほ見りやうれしひ事計り
かわる枕に身はうきしづみ〔(○よる辺 本てうし)まかなくになにを種とてうきぐさの花にうかれてとし月なびく風のさしひきこゝろのかぢにしめつゆるめつ得手に帆をあげのいとまに身をぬき花のほんにあこぎがうらにしきかゐどるつまのしどけなきゆくへやいづこあま小舟〕やるせないぞゑ流れの身
いかに浮世なおまへじや迚も〔(○夕がほ 本てうし)きのふまでながめし花もいつしかにけふはわが身と夏ぐさの日にぞしをるゝうきおもひせめてあはれと夕がほの露のいのちとかねてはしれどしらではかなきゆめの世や袖はなみだにかわくまも啼てあかしてやまほとゝぎす一こゑそらにさへわたる月のかゞみはてりながらくもりがちなるむねの闇早」(廿一オ)ふけわたるかねの音に迷もはれて死出のたびいそぐこゝろかなつの夜の涼しきかたの道もせをてらしたまはれ三ツのともし火〕あまりほゐなひわかれ際
ゆめでくらした其うれしさを〔(○浦しま 二上り)かすむこづへのうつりがちりて花や恋しきおもかげをさつとふきとくはる風に」(廿一ウ)かすみがうめるはつざくら花の色かにツイうつり気ななたねの蝶もつゆのとこひよくのてふのよねんなく羽かぜかわしてひらりくる/\/\とまひあすぶゆきかさくらかはなのなみうつゝしらなみいく代が恋になれしなさけも今ではつらやひとり寝をほんにおもへばさりとは/\むかし恋しきなみまくらさだめなやげにやなななくよのなみじをこへてよ?きが浦に」(廿二オ)うらしまがつきぬ契りをかたるいゑづと〕おもひだすほど恋しなる
実もうわきもこゝろはひとつ〔(○ねやのあふぎ 三下り)ねやのあふぎはなみんなゑそら言あわぬ思ひをこがるゝよりもあふてわかるゝことこそつらやあきのあふぎとすてられて秋の扇とすてられてわしやどふもヱヽならぬヱなんとおもふていさんすことかゆる」(廿二ウ)がぬやうにかなめがだいじサアそふじやヱ手折もやせん人ごゝろながれのみづにさそはれてうはきにひゞくかねのこへきけばこゝろもすめやらぬ宵の口ぜつに無理なさゝめごといわずかたらず胸せまりかねての事をおもふていさんすこゝろかへそうかゐなそうかいな」(廿三オ)あくしよ男のつらにくやすかんおゝすかん品よくあふぎとるそでも風になびかんわがこゝろひかばうれしき君がつま琴〕あわして見さんせ胸の中
そつと人めの関ぢはこせど〔(○汐くみ かさづくし 二上り)ぬれによる身はかさゝしてござんせ人目せきがさいつあを笠とほんにゆびをりその日がらかさまつになが柄のしんきらしそれヱ/\」(廿三ウ)気をもみぢがさしらはりの愛の子にみさほたてがさやあい/\がさのすへかけておもひもひらくはんながさしほらしやいとままふしてかへる波の音のすまのうらかけてむらさめときゝしもけさ見れば松かぜばかりやのこるらんまつ風の/\うはさは代々に残るらん〕とう/\うき名の立つらさ
あふたあしたはツイきがとがめ」(廿四オ)〔(○狂らん 二上り)花の夕部のうつりがもれてそらにしられぬ雪の日もかざしてゆかんかざしぐさはらふたもとのくちもせでわやくな風のいたづらもたがこだくらやにくからぬかわゆらしかむり/\てふちしほの目おちやめのともこしもともつれてゆこ物花の山さても見ごとにみごとに花のいろぞろへそれで心をまよはするあいや君さまはいつのいつか」(廿四ウ)らあひもせで沖のふねほどこがりやせぬ宵は見もせで夜なかにやあはぬなかぬからすのきぬ/\はアヽしようてこい/\わけしらぬみだれみだるゝ峯のしらくもさら/\/\/\あなたへもつれこなたへさそひしどもなくとぞ見へにけり〕かくし立してさとられる」(廿五オ)
見ればみるほどきはうはの空〔(○清もと うめのはる 本てうし)春げしきういてかもめの一イ二フ三イ四いつかあづまへ突羽子のかのもこのもに都鳥いざことゝはんゑはうさへよろず吉はらさん谷ぼりたから船こぐ初がゐやよいはつ夢を三ツぶとんべん天さんと添ぶしの花のにしきのかざり夜具はたちばかりをつみかさねほうらいさんといわふなる冨士を背中にやがため」(廿五ウ)の塩尻ながく居すはればほんにいなかもましばたくはしば今戸のあさけぶりつゞくかま戸もにぎわひてだい/\かぐら門礼者梅ががかさぎの見めぐりの軒にさへづる鳥追が三すじがすみのつれ引や君にあふ夜のたれしらひげの大もりこへてまつちの山と五十崎やそのかねが渕かねごともたのしひ中じやないかゐなおもしろやせん秋らくには民をなで万ざい」(廿六オ)楽には命をのぶ首尾のまつかへ竹丁のわたし守身を時を得て目出たくこゝにすみだ川つきせぬなごり清もとのさかへさかふる梅が風いく代のはるやにほふらん/\〕おもひかさねた胸の雲
かわらぬまことは幾千代かけて〔(○ときわづ 老まつ 本てうし)そも/\松の目出たき事万木にすぐれ十八公のよそほひ千年のみどりを」(廿六ウ)なして古今の色を見すしんの始皇の御かりの時天にはかにかきくもり大雨しきりに降しかばみかどあめを凌がんと小まつの木蔭によりたまふ此松たちまち大木となり枝をたれ葉をかさね木の間すきまをふさぎてそのあめをもらさざりしかば帝太夫といふ職を」(廿七オ)おくり下し玉ひしより松を太夫とまふすとかやかように目出たき松が枝に巣をくむ田鶴のよわひをば君にさゝげてごうそんは亀の万劫ふるかわのながれたへせぬ金銀珠玉どう/\/\と御くらのうちおさまる宿こそ目出たけれ〕ふかい色もつ根はかたい
 ○上るりさはりドヾ一
や゛るしんくに又おもひつめ」(廿七ウ)〔(朝がほ)ないてあかしの風まちにたま/\あひはあひながらつれなきあらしにふきわけられ〕とげて添寝がして見たい
 ○同
わたしやいとわんいくせのくろう〔(なる戸)めうとの中をてん道もあわれみあつて国次の刀のせんぎすむ迄はおつとの命たすけてたべ〕どふぞおまへとすへながふ
 ○同」(廿八オ)
心でこゝろをとり直しても〔(?)さんぜんせかゐを尋ねてもまたとあるまひとの子ぶり眼にちら/\とかたときもわするゝ間なき三うらさん〕なんのおもひが切らりやう
 ○同
寝るもねらせれずツイうか/\と〔(?)つまかう鹿の果ならでなんぎすゞりのうみやまとくらうする墨うきことをかづかくおふでか身のゆくえ」(廿八オ)いつ迄はてしなにはがた〕あふもうつゝのおもひごと
 ○同
明くれうれしくわが身にかへて〔(菅原ノ三)たけの園の御所奉公下々の下々たるうし飼舎人もつたいなくも身ぢかく召れかんしようぜうの姫君とわりなき中の御ふみづかひ〕したる苦労もいまはあだ
 ○流行うたの部(以下省略)


四 『サハリ都々一図会 弐編』(幕末刊か)

浄瑠璃佐和里都々一 弐編」(表紙)
サハリ都々一図会 弐編
森田軍光作
長谷川貞信画」(見返し)
先年。さはり都々逸。儀太夫をまぜ。それ/\の情をくわへ。一冊の草紙となせしに事のほかにイキ強く。文書(ふみや)此あじをわすれかねね。代二編の懇丹をめぐらせり。作者其尾にとりつきて。おこがま敷も智恵をはしらし。人間万事犀翁が。生れついたるぶきよう物と。いはれん事もはづかしけれど。只身をすきより口すぎの。筆より外にとりへなき人まじわりに心をば。春の日なかや雨の夜のあくびどめにもなりつらんと。軍光みづからつゝしんで。云云」(口ノ一オ)
娘ごゝろの只一すじに〔(式三?)初日は諸願満足円満二日の日又二ツ柱鈿女の神子が舞の袖〕むりをむすびの神さまに」(口ノ一ウ)
(絵)」(口ノ二オ)
恋しきぬしかとよろこびみれば〔(一の谷)扨は鎧のかげなるか。恋しとまよふ心からおすがたと見ゑけるかと。〕いとゞましくるわがりんへ」(口ノ二ウ)
なんのわけやらくわしい事は〔(ひらがな)しらぬながらも千鳥が??敵は川を渡さじと水底に大綱小綱十文字に引わたし。〕ぬしにじよさいはありやせまい」(一オ)
しよてのゑようにかわつたわが身〔(新口村)奈良の旅籠や三輪の茶や五日三日夜を??日余に四十両つかひ果して二歩残る〕せかれてかをもみらりやせん」(一ウ)
知恵はあそても思ひはふかひ〔(二代鏡)さのみ無理とは。思はねど。いかに男のこうけじや迚。わしといふ者傍に置。ね所迄を敷てやり。〕しんてづくならまけはせん」(二オ)
ぬしにつくしたわたしがまこと〔(釈七)水の出端へ茶のはな香。そつとさし出す追蹤も。〕みんなおまへにすかれたさ」(二ウ)
おゝてわかるゝ其あけがたに〔(鳴戸)今一度顔をと引寄て。見れば見る程胸せまり離れがたなき憂思ひ〕こんなくがひがあろかいナ」(三オ)
わたしの言葉がいつわりなれば〔(千両のぼり)うつして見たき鏡立写せばうつる顔と顔〕じつとながめて目になみだ」(三ウ)
おまへのかをみにやきがをちつかぬ〔(八陣)都でお別れ申てより勿体ない事ながら。とゝ様や母様を思ふ案じ?所へゆく。あなたの事が苦に成て。ほんに寐た間も忘かね〕いつも淋しきねやの内」(四オ)
いけんされてもみゝへはいらぬ〔(イモセ山)尊いも卑いも姫ごぜの夫といふはたつた一人けがらはしい玉の輿〕おもひきられる中じやない」(四ウ)
ゆふてかゑらぬ事とはしれど〔(質みせ)夕部の風呂の揚り場で。此腹帯をかゝ様が。見付さんして。コリヤお染此腹帯は何事ぞ。〕おもへばかなしいうきいのち」(五オ)
ぎりがかさなりや人目もはじず〔(弐度目)其覚悟とは初から合点して居ながらもあんまりほいない憂別れ〕あとはいわづにないじやくり」(五ウ)
おまへのうわきはもとより承知〔(山しな)茶屋の茶よりも気の花香お寒いくからふと悋気せぬ詞の塩茶ゑひざまし〕どふで男はあくしよ物」(六オ)
あわぬ其夜はおまへのことを〔(帯屋)案じ過して何にもいわず六角堂へお百度もどふぞ夫にあかれぬよう〕ひよんなこゝろのでぬようと」(六ウ)
恋に心もわしやもつれなば〔(お七)事をわけてのお詞を。さら/\無理とは思はねど。仮の契りも二世迄と。云かはしたる恋中を。〕きれてはつながるゑんじやナイ」(七オ)
おさない時からおまへとわしは〔(お千代)よい女夫じやとなぶられて。都の楓葉色艶もツイ祝言の新枕いつの代迄の女夫じやへと。問たりやお前がゑがをして〕かわいがられた事もある」(七ウ)
恋にあこがれ身はやつれはて〔(円覚寺)心一ツにとつ置つ。云ては恨恨んでは一人明する。夜明の烏かはい/\と。鳥さへも。〕いとゞうらめしわがおもひ」(八オ)
ほかにあくしよはせまいとゆうて〔(雪姫)あの大膳の鬼よ蛇よ。人に報ひが有物かない物か。くひ付ても此恨はらさで置ふかと〕むねのほむらで身をこがす」(八ウ)
うわきごゝろをわしやふりすてゝ〔(鉄炮や)よし有人と思ひ初。二世も。三世も。かはらじとちぎりし事も皆いたづら〕かいたせいしもみんなあだ」(九オ)
どふぞおまへにぎりだてしやうと〔(筆助住家之段)寄くる人になぶられて笑ふて居れど心には。泣て汲出す端香より〕なをもまさつたわが身さへ」(九ウ)
はつのごげんにおもふたおきやく〔(山姥)そも水揚の初日よりふと逢初て丸三年。何が互の浮気壮りのぼる程に/\。〕わがみながらもばからしい」(十オ)
夫婦になるのを只たのしみに〔(新吉原)色やうは気を嗜んで。?大事といひ号の。殿御の事も。そなた事も。恋しなつかし思ふのを。〕むねにおさめてしんぼする」(十ウ)
こがれ/\てしゆびした物を〔(惣五)火の中。水の底迄も連て行とは云もせで。忌はしい此去状。〕ほんにおとこのつらにくや」(十一オ)
つもるはなしも人目にせかれ〔(埴生村)其顔もせず朝夕に。可愛がつて下さんした。去状にして情なやなぜ打明て死やうにいふて聞せて下さんせぬ。〕むごいしうちとうらみなき」(十一ウ)
そつとかくれて爰まできたに〔(安達)延より。見れど盲の垣のぞき早くれ過る風につれ。〕ほんにうらみなあけがらす」(十二オ)
いかにはかないうきよじやとても〔(忠臣ぐら七だん目)勘平殿は二十に成やならずに死るのは嘸悲しかろ口惜しくかろ。逢たかつたぞ?ふのに。なぜ逢せては下さんせぬ。〕此よにおもひはないわいな」(十二ウ)
せかれ/\て月日もむだに〔(朝がほ)身を尽したる憂思ひ泣て明石の。風待に。たま/\逢ば逢ながら。つれなき嵐に吹分られ。〕おくるつらさも我ひとり」(十二オ)
おゝてはなせばこゝろもとけて〔(杉酒屋のだん)それでわたしも落付た。必かはつて下さんすなと。〕ゆうもたがひのさゝめごと」(十三ウ)
大事のおとことおもうているに〔(宇治)聞へぬ仰やうらめしやと。主筋放れ水仕から嫁に成たる嫁気質〕かわいおかたはたゞひとり」(十三オ)


五 『よしこのはなくらべ』(幕末刊か)

よしこのはなくらべ にへん」(表紙)
(絵)貞信」(二ノ一ウ)
(絵)」(二ノ二オ)
寒いくらしも身勝手からと咲を苦にせぬ水仙花(都来)
昼の内からそはつく風に雲がつれ出す宵の雨(春?)
月はさほどにおもはぬけれど兎角梅から持つける(五橋)
おもひ立きる戸尻が明てまたも見合す月の顔(団之)」(二ノ二ウ)
何をいふても年若ゆへに色けずくない春の山(五橋)
長い間の苦労も菊の花にわすれて気はそゞろ(団之)
子まで有中引わけられてやつれ果たる干芋蔓(真玉)
とめどない程うれしふ成もはれて逢夜の月見舟(都来)」(二ノ三オ)
下手の上手のいやおうなしにころぶ毬は愛を見せ(花雪)
露と薄の程よい中も霜と変じて仇と成(大和 亀齢)
高いうはさのつき出じやとて壱弐あらそふ綿の舟(桜陰)
水にこがれし苦を絶かねて色をさましたやけ茄子(一鬼)」(二ノ三ウ)
後にやひとつに成とはいへど解ぬ氷につもる雪(桜陰)
露の取もつことわりかねて月もよぎなくやどる草(五橋)
わづか一夜の情じやけれどみれん残した報謝宿(都来)
あだな色からもち込かけて雪を折々乗る松(五橋)」(二ノ四オ)
風のしわざをこらへし雲が忍びかねては一時雨(雪丸)
力なく/\気をとり直しひとりしてとく蚊屋の紐(団之)
ついた虫さへもふ是ぎりと払ひ落した土用干(都来)
卒度見かけは程よいけれど根葉のおそろし蓮の花(林昇)」(二ノ四ウ)
当りや砕て跡ないものと解て仕舞た玉あられ(五橋)
あまりきれいに出たゆく月が松に朝日をそはす色(林馬)
あつき情も若かはろかとうまき氷を踏こゝろ(春?)
風ですれ合とくさの音も聞ば歯がゆい事ばかり(笑雀)」(二ノ五オ)
松もみす/\ぬれたが月も晴にや出られぬさつき闇(笑雀)
水の通ひがたゑ/\故に浅く成たる夏の川(万丸)
透を忍んでいつしか風があたり付たるかこひ梨(南英)
よいか悪いかまだ見ぬ先に噂しだした初芝居(笑雀)」(二ノ五ウ)
たまに逢ゆへ傍はなれずに可愛がられて泣へちま(五橋)
永い月日にみじかふきられ二度の芽を出すさつま芋(林昇)
それと見るより追まはされてわきへそれたるのぼり鮎(五橋)
すいも甘いもあぢしるゆへにわかれ際よき杏子種(仝)」(二ノ六オ)
すねた枝じやと切はなされて松もほろりとこぼす脂(五橋)
ちよつとじやうつきいふたる事をあとへ引さぬ夜店出し(玉嵐)
綿のやうなる姿と見こみ風がそひよる雲の峯(雪丸)
蕣が付て登るもいんげん豆に虫が入てはならぬゆへ(三枝)」(二ノ六ウ)
深い中おも餌につらされて水をはなるゝ魚ごゝろ(林枝)
手入したとてさかせる迄は色?わからぬ菊の苗(都来)
縁をきられりやまた望人が多く成たる戎ぎれ(仝)
秋の風からみの落ちくちともめて夜る昼やかま椎(万丸)」(二ノ七オ)
花を咲してしばしが程にからい身と成蕃椒(とうがらし)(笑雀)
すねた姿に一入あいが思ひましたる磯の松(玉嵐)
うまい実入のとこ考て中へつけこむいなご取(白燕)
桶の輪でさへしまりがゆるみや水もすき間をぬけて出る(大和 亀齢)」(二ノ七ウ)
ほんにお前が橋まめなゆへ逃る小芋もついさせた(林馬)
恋し露にもあはれぬ身かと啼てくらした籠の虫(翫雪)
松に未練の気はないけれど雪のわかれがとけしない(五橋)
風が意地わるするゆへ舟もおもふ湊へ入かねる(南英)」(二ノ八オ)
色けづく間をはや待兼てこゝろぜきしてとる棗(玉嵐)
かたいちきりと二見の岩にじつと朝日はそふて出る(梅枝)
きれちやならんと又くりかへしよりによつたる糸つむぎ(花雪)
小声はなしを早きしつけて?がくらいと蚊もわめく(?馬)」(二ノ八ウ)
花のかほりを送りし風があしき心をそびき出す(玉嵐)
かくふ身じや故世話がつてんでならぬ苦をする鉢の蘭(梅陰)
虫が付たか思もよらず落て乱るゝ熟し柿(一思)
きれるしたぢか矢もつゞきかねたるみかけたる弓の弦(万丸)」(二ノ九オ)
みれんらしくも荒神松をそつとのぞいた窓の月(林枝)
楽に身がなりや早秋風が気ではそろ/\ひやつかす(万丸)
なるかならぬかあのほうづきは口のこなしが上手へた(花雪)
人にゆびざししらるゝ花も時をはやまるかへり咲(笑雀)」(二ノ九ウ)
つゝみかくして濡たる色も通り抜たる汗襦袢(五橋)
いふに言れぬこゝろの底もひよんなふかみに出来た事(仝)
はねる積りがやさしい雪にそふてぐんにやり成た竹(花雪)
月はそふ気でゐる門松は女夫づれゆへわらふ山(梅枝)」(二ノ十オ)
風と汐との二道かけてしばしこゝろを沖の舟(児門)
きれた処を又引出して結びとめたる三味の糸(雪馬)
弄(なぶられ)てすきにしらるゝ将棋でさへもいやといはずに又さした(笑雀)
つらや我身におぼへが有てかへすことばがはれ立ぬ(五橋)」(二ノ十ウ)
松を見込であのやどり木も?のしのんで咲す花(翫雪)
かゝる苦労にみは成下りちぎり人(て)を待ぶどう棚(雪馬)
月も柳にしつくりそへば風のりん気が見へ通す(山雀)
積るおもひを重てゐても人にしらせぬ谷の雪(雪丸)」(二ノ十一オ)
のぞみ通にさかせた故かすこし自慢を菊ばたけ(露蝶)
うはべきれたと見せたる筆は真に苦労をするわいな(大和 亀齢)
早く行ふも出汐におくれ風をたよりにおもふ舟(?花)
つらや別れた捨てこと聞てしばし詞も無じやくり(林枝)」(二ノ十一ウ)
ゆびもさゝれぬ岩はな桜落りや流れにうき沈(露蝶)
松も月には気がはる故に雪にそふてりや出ずいらず(五橋)
ほんにぼく性なぶ細工ものが御意に叶ふた奈ら人形(宝丸)
衿にかほいれきせるを杖にむねの衢をとつおいつ(団之)」(二ノ十二オ)
すこし色づきやめ放(ばなし)出来ぬちぎろ/\とする蜜柑(三枝)
死ぬのいきるの味あるものをくはず嫌ひの鰒と汁(淀 文枝)
あつい異見を今つく/\とひとつ身にしむ秋の風(大和 赤?)
岩にせかれてわかれし水も?場こしては又ひとつ(仝 不酔)」(二ノ十二ウ)
ふ?や見付のやさしい花も色にかけてはおそろしい(露蝶)
にくや障をしに来た雲?月もよるかと気がもめ?(団之)
葭と芦とがそふたる中をむげに引わけはいる舟(花雪)
月の七日は不成といへどそれに逢瀬をとげた星(備前 集丸)」(二ノ十三オ)
悋気から出たいけんのやうにしらぬ顔するにくらしさ(翫玉)
風のしやくりをまことに受て露とわかれをしたる草(児門)
松にかひなく今宵の月はにくや梢を打どふり(林枝)
色?つくろふ花かんざしもうらぬ間がこのもしい(玉嵐)」(二ノ十三ウ)
か??成てはなに一応で雪も容易にやとけにくい(大和 漁船)
人手頼んでもつれをいふてまかしや捌ける綛の糸(雪馬)
なびく薄の程よきふりに月はゐつゞけしたいやら(青一)
花の色香に通(かよひ)し鳥も今じや侘しき籠住ゐ(姫松)」(二ノ十四オ)
義りにせまつてたもとをくはへいつか情の味おぼへ(玉嵐)
そふて間もなく別れとおもやほんにはかない松の霜(都来)
浅い時からたよりの風と深く成たる帆かけ舟(大和 児石)
思ふこゝろに狂ひがなくば?をへだてゝあふ砧(梅枝)」(二ノ十四ウ)
風に柳のいたづらものと?やさくらがわらひ咲(梅?)
迷ふこゝろのあの蝙蝠も暁(あけ)る軒ばにあはて込(貴?)
いやじやけれどもさゝねばならぬ義りで貰ふた角の櫛(柳糸)
人め埋火おもひを灰へ書た火ばしのふた柱(梅?)」(二ノ十五オ)
宵にや梢の表を通り更りや裏から忍ぶ月(梅園)
遅かれ早かれ合のじやけれどこゝろそゞろの歌がるた(逸外)
  追加
ませた色けをもつ木娘は花を咲せる下ごゝろ(粂児)」(二ノ十五ウ)
花洛
三条寺町      丸屋善兵衛
一条東洞院     田中屋治輔
新町魚之棚     丁子屋嘉輔
浪花
心斎橋通北久宝寺町 敦賀屋彦七
同本町       河内屋和輔
堺筋通清水町    伊予屋善兵衛」(裏見返し)



六 『浪花の梅』(幕末刊か)

浪花の梅」(表紙)
(絵)」(見返し)
(絵)」(口絵オ)
みなのお世話でそだてゝもろて花を咲する菊の苗
丸ふしたさのこゝろの辛苦軒に人眼をしのぶ草
思ひ染しに色さへ今はなくて苦労のたね茄子
どろで咲した此かきつばた生て根じめが見てほしい
君が引手の便りをまちてねがひかけたる姫小松」(口絵ウ)
今迄は闇と思ひしわたしがこゝろ咲てうれしい花あかり
こらい情なきあなたの癖と知つて居ながら愚知をいふ
賤が手業に焚付られていつか燃へ出るはつ蕨
花に見とれてついうか/\と恋の淵瀬をさす筏
縁のはしかや身を投こんだ人に恩あるはなし亀」(一オ)
たとへ苦労をするともまゝよ心底づくなら是非がない
いつもぐはら/\夕だち雨に落をとりたい雷神(はたゝがみ)
なるかならぬか我かしは手にくちをむすぶの神いのり
加減ほどよふおしへてもろて味(うま)ふ馴たいこけらずし
去年(こぞ)に積りし口舌も今に解ぬおもひの残る雪」(一ウ)
どこへいでゝもぶらつかされてあかひかほする小提灯
猫の眼よりは早気がかはりやニヤンと返事が来るじややら
折てたまはれぬしない花をすてゝおくとはどふよくな
風がなかだちつい筆まくらころびをふたるあさの露
明暮に思ひ忘れしあの山桜いつか実の乗る事じややら」(二オ)
物はいわねどそぶりでそれと人に見られる壬生念仏
垣にからんだ朝がほさへも露をたのみに花さかす
調子合してほどよひ三味もやぼな引人(ひきて)にや音を出さぬ
風の柳でわしやいて見たい鈴をつけたらなるであろ
打てかわつたわたしが異見ねかす釘じやときかぬふり」(二ウ)
世間ひろふに晴たと見へて山もかすみの帯をとく
常に嫌ひな物でもぬしの箸がかゝればあじが能い
つゝむうへにも色みし物を落て弘がる契話(ちは)の文
暮ぬうちからはや顔出して人をわらはすよばゐぼし
渡る鳥さへツイ南から北も御ひいきお願ひに」(三オ)
花は散ても月日をまてばかへり咲する事もある
言葉さげても思ふた人はよそのなのはに恋す蝶
いやかおふかは不知火なれどこゝろづくしの神もふで
杖をちからに咲朝がほのけふはたつとも翌(あす)はなを
いもせ山はなや薄のこぼした露も落て吉野ゝ川となる」(三ウ)
数に入レどもまだ端(は)しの歩(ふ)でやくにたつのはまれな駒
案じすごしもこゝろのまよひ明日はあしたの風がふく
うき名高砂むかしとなりて今は互ひに友しらず
軒の春雨しづけき中に夜のまくらぞ恋がます
蝶もみれんか東雲ごろははなれ兼たる花のそば」(四オ)
ぬしとくぜつにひねりし塵も積るおもひの山となる
不二の雪さへ解ると聞に心ひとつがとけにくひ
こがれ/\て一筆やつて跡で墨附あんじられ
よしとあしとを汲わけかねてふつとこゝろに角(つの)めだつ
好た人なら海山こへて摺鉢うりでもいとやせん」(四ウ)
人眼しのべどつい穂にいでゝまねくおもひのいと薄
きのふもあはねばまだけふもみづうらみいふ身もまゝならぬ
つらや此身は友なし千鳥寝覚さびしく啼あかす
浮草をみるにつけてもあんじはせまい流れしだいに花がさく
わしがちからで咲事はならぬ人の恵みを室(むろ)のむめ」(五オ)
虫がつくるとほん気にかゝり内にしのびしいてふの葉
しかと調子が合の手ならば人にや聞さぬしのびごま
すきな梅さへ絶たもわたしや粋なあんたに迷ふたゆへ
いつの頃よりつい馴そめて今はおもひの種となる
明た扇の末広々ともつた要も神かけて」(五ウ)
ほんにあんたが酒好きゆへにわたしや餅焼世話がない
露の恵みにそだちし蝶はいつもはなれず二人り連
心知り逢ふたがひの中は言へど跡なき春のゆき
室にいるよりはやませかけて恋が麹ではなさかす
今はやみじで暮していれどやがて見さんせ月も出る」(六オ)
はでな出花がついくちにあい末は土瓶で暮したい
まさかそわれぬ義理づめならばのいて私しもたつよふに
意気で気がきいて身はしやんとしてぬれて涼しい水うちわ
末はどふしてどふなる事といらぬ思案も恋の愚痴
程のよいのにツイほだされてうから/\とたつ月日」(六ウ)
ぬしのこゝろははりこの虎よ何をいふてもくびをふる
ひらく辻うら心のなぞも逢へばおもはずふくむゑみ
浅い深いを汲わけさんせどふで流れの身じやものを
余所へ引ぱる鳴子の綱の切れてこちらへもどる鳥
玉の盃そこ無ひゆへにおもひざしさへむだになる」(七オ)
思ひよわりし身はやせ馬でつらや恋路の重荷負(をふ)
雪にしらみしいつわり事もつもるうらみのもの思ひ
すいた花にはあらしもいつか末をかけてぞ添とげる
ぬしの浮気は立場の駕で少しなじむと乗りかへる
花は咲てもわしや山吹よほんに実になる人がない」(七ウ)
どこが花やら身はうき草のたより定めて咲したい
忍ぶ切戸にさし込む月は恋の底意をしらぬ野夫(やぼ)
ちゞに心をくだかけのこゑ明ぬわかれを告わたる
恋の瀬ぶみもまだせぬうちにあだな浮名が先にたつ
君のおこしは玉しま川でもゆる思ひの鵜飼の火」(八オ)
猿が人まね笑をと侭よ耳に手を当て口おさへ
げんげ花でも野に咲よりはどふぞね引にしてほしい
俤の画(ゑ)にもかゝせて似る物ならば主をうつしてはだまもり
ぬしは此ごろ色醒が井でどふもこゝろが水くさゐ
たとへ転(こけ)ても身はよごしやせぬ風にまかした女郎花」(八ウ)
たとへ桜の花にもさんせ風のぐわゐで散はせん
しのぶ恋じは只ふか/\と着たる人眼の目せき笠
放し鳥見てわたしも早ふぬしのおそばへ籠はなれ
返す/\とふみにはかけどかへととむないけふの首尾
直なよふでもあの香車づらまさかなつては横に出る」(九オ)
其日/\に咲朝がほもばけて咲たるはなもある
月に憎みしあの村雲もしのび逢夜は恋しなる
骨を折たる扇も今は秋が来たので投らるゝ
余所の陽気な事みるにつけおもふおかたが???なる
知つていれども馴染がないと軒にうろつくつばめの子」(九ウ)
すねて見せても程よい松は藤が下からまとひつく
月の宿るをうらめしそふにそつと覗きし窓の竹
わたしや色けもまだ白梅のかたい莟と笑らわるゝ
出合ふ思案も月の輪寺で苦労時雨のさくら花
なんと鳴海がわしやしらねども絞る此身はいとやせぬ」(十オ)
鐘の音を聞ぬ顔して?きらしいれどむねがどきつく明の頃
松に散来る桜もにくや風にもまるゝ糸やなぎ
忍ぶ恋じの名は立ゑぼし三番叟から人がしれ
千草結びの辻うらあふて人の手前がはづかしい
思案あつてかアノ落梅に宿をかしたる苔の花」(十ウ)
思ひ染しを悟られまじとわきへ心をちらし形
早ふ逢ふと筆とりあげて心せわしふはしり書
煎豆もやがて花咲時節もあろふ焼で暮しておりまする
ほんに思へば愚知なはわしよあだでりち気な人はない
雨の降る日も風ふくおりも通ふつらさの旅の空」(十一オ)
風流(はで)な盛りのうき菜の花は油とらるゝたねとなる
人におとらぬ気にはりあれど手折(たおり)てのない花いばら
畝に転んだかぼちやじやけれど形(な)りの悪ひはあじが能(よ)ひ
思ひ詰たる氷室のこふり月日たてども解兼る
私タシ狐とおつしやるけれどよわるあんたの鉄砲には」(十一ウ)
たまに大原もアヽまゝならぬしのぶ此身は八瀬のさと
恋の願ひをかけたる神も一夜女郎とは曲がない
三味せんのひく手あまたの座敷はあれどしのびごまほど身につかぬ
咄し山々やまさきなれどぬしは花火でぽんといふ
あかぬ別れに啼鶏よりもつらや待夜のかねの数」(十二オ)
君と添寝のうれしい夢を憎や蚤めに覚された
おなじ野山でひき残されてまたの子(ね)の日を待小松
いつか逢夜を気はせきれいの尻もすわらぬもの思ひ
お気の短かさ此夜につれて口舌どころか契話(ちわ)どこか
ぬしのこゝろは三国一で苦労駿河のふじの山」(十二ウ)
梅のにほひがあやにくもれて今朝は小鳥がつげに出る
月と花とのよひ中を見て松はみどりの角はやす
あだ花といわりや意地から椿の枝へむりな接木(つぎゝ)もせにやならぬ
人が大事に植おく花を垣根越とはつらにくひ
文は千束(ちづか)でさくらは千本(ちもと)恋の山じとはなの山」(十三オ)
逢ばうれしさ先だつゆへにうらみいふのも口ごもる
夢に起されふと眼を覚しまたもおもひの忍びなき
人の手いれもない朝がほで垣をたよりに咲くばかり
ひとりうか/\野山の梅でたれが宿ともしてくれる
宵は酒でもまぎれもしよが更(ふけ)るほどなをます思ひ」(十三ウ)
人眼あるゆへすげないふりもこの手柏のうらおもて
しんき待夜のみくじを上ゲて来るになるまでむき直す
夕風に隅田の家根ぶねいと憎らしや意気な二上り三下り
辻うらの歌をうたふてつい爪弦(つめびき)も逢でこゝろのりんきぶし
諷(うと)てなさるをづきなで居たが其所(そこ)の相の手気がつかぬ」(十四オ)
深い恋じとなる雷のゑんを取もつ蚊やの内
たとへ異見が邪見になろと思ひつめたらの???ぬ
奥の一ト間で啼うぐひすの梅をしたへどまゝならぬ
桂男の悪性ものとそばを放れぬ玉うさぎ
おもひ染てもまだ恥かしく野辺のすみれは春の色」(十四ウ)
世間あるゆへ逢てもそれといわぬわたしがせきばらひ
侭にならぬにいとしさまさり君にこゝろをつくし琴
おなじ流れにそだつていれど目にもとまらぬこまん軽魚(ざこ)
なびくのか香をちらすのか柳と梅をこゝろしてふけ春の風
五月雨やある夜ひそかに能(よ)ひ辻うらを松にうれしき月の影」(十五オ)
君は佐保姫すゞみのふねで顔はもみぢに雪の肌
庭の千草も色香を増して日々に栄へる百花園
風流(はで)に咲ても身は高ぶらぬ憎ひこゝろの深見草
  追加
松の操もさくらの仇も生る手元に召しやんせ」(十五ウ)
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大坂心斎橋通南本町
書房 河内屋平七」(裏見返し)


七 『どゝゐつづけ』(幕末刊か)

どゝゐつづけ 一へん
了古画」(表紙)
あふさい/\よろこびありや〔(長うた舌だし)といはひとへにありがたき花のお江戸の御ひゐきをかしらにおもき立ゑぼし〕ほかへはやらじとたきし??(三川やでん女)
ぶたれたゝかれその手にすがり〔(しんないふぢかづら)わたしがつよくさからはゞすいなおまへのお心がかはらしやんすであらふがの〕わけをいはねばわかりやせぬ(とこ藤)」(一オ)
ほれてわたしがほめるじやないが〔(清元おちうど)こんなゑにしがからやうにおしのつがひのたのしみに〕なぶられたいのが身のねがい(八尾松)
そもやふたりがそのなれそめは〔(常はづおふさ)ふみてくどかず人たのまず心のじつをうちつけに〕思ひに思ふてけふのしゆび(菊次)」(一ウ)
むねに手をおきふでとりなをし〔(とみ元こいなまみへ)ふみのたよりですましてもあはずにいればきにかゝり〕どふかきやまことがとゞくやら(八尾源)
はなのさかりは向じまさして〔(長うた)野辺のあそびもよねんなくこりやたがめいきちゝちやなもちやかはらの??ちんがちが/\ちんがらこはしり/\ついてさきへゆくのはさかやのおてんば〕あとへさがねるはおまはりきつねめ(??)」(二オ)
じつとだき〆めとめをみ合〔(常わづ新かつま)めいどへいそぐたびごろもうすきちぎりの?????〕こゝろでないてもわらいがほ(??)
わたしのしよふばい朝からばんまでおしゝをかぶつて〔(とみ元くらま)大みそかもがんじつももゝ引がけのたびかぐらわれとうかれる道しばに〕しゝのまねしてよをわたる(三川やでん女)」(二ウ)
いろのいのじをふたりでおぼへ〔(清元おそめ)なにやらそうしへかいたのをそなたに見せてとふたらばこいといふじといふたのをむすびはじめのとのごじやと〕思ふまもなくけふかぎり(菊次)
はたでどのよにわらふとまゝよ〔(清元ひがへり)おやがしかろがせかんしよがまゝよのふこれほれたとのさがすてらりよか〕〔(常はづうつぼ)をく山のさいかちばらのなかまでもおまへとならばどこまでも〕そふて見かはす人のかほ(八尾源)」(三オ)
百たびいふてもぬしある身では〔(とみ元)くどふいふのがおまへのくせよなんぼそのよにせかしやんしても〕みさをたてたいこゝろざし
はなのつぼみとこいじのふみは〔(?きよ)一寸あさぎにふでそめていとしいいもじをかゝんすかあはでこがれていさんすかそれでもいろますたまずさを〕ひらくあしたをまちかねる(八尾松)」(三ウ)
きやすめきいてもうれしく思ひ〔(とこ?)どふで女ぼにやもたさんすまいわたしばかりがほれていてうそのへんじをま事とおもひ〕かげじやさだめしわらふだろ(芋かつ)
めうとやくそくおよびもないが〔(常はづ)めりの思ひもてんとやらどふで女房にやなられぬけれど〕せめておそばでみやづかひ(紙菊)」(四オ)
もゝよかよへどさてなさけなや〔(しんない)たとへこの身はあは雪とともにきゆるはいとはぬがこのよのなごりにいまいちど〕あふてうらみがきかせたい(八尾松)
このよでそはれぬあくゑんなれば〔(常はづ)あのてらまちをでぬさきにわたしひとりもしぬかくご〕はすのうてなであらぜたい(菊次)」(四ウ)
女ふたりがはなすをきくにいつもおとこのさたばかり
さたをするともおとこのやうにせけんかまはずいゝもせぬ
わがほれりやひともかうかとじやすいのぐちでかた時はなれることはいや
あふてのちおもひまはせばいよ/\ぐちよふかくなるほど人よりも」(五オ)
むすぼれしえにしのいとほどふしぎはないよいまはからまるとこのうち
よのあけぬ国があるならふたりがすんでつもるはなしがして見たい
千のきせうでからすをころしぬしとあさねがして見たい
あさいとのよれつもつれつもつれつよれつすえはほどけぬえんとなり」(五ウ)
なみだもろひとわさびにまでもあまく見られる身のひごろ
せうじぴつしやり出ていたあとはとがなききせるをたゝきたて
やぼにしていきじをはるのあはゆきならでまぶにとけるではらがたつ
はりつめて見ればいくぢで身はなつごふりとけてしまへばたゞの水」(六オ)
したえだのまゝなるはなはこゝろになくてとゞかぬこずえにくろうする
こずえとてまゝにならぬでわしやなけれどもまこととゞかぬそのわけを
ゆきくれしひとにやどかすあるじのはなもあさのわかれはそでのつゆ」(六ウ)
へのやうなねがひなんぞとわらわばわらへおさつでしよくせうがしてみたい
みぎとひだりにとうなすおさつおいていつせうくらしたい
さけもやめよがたばこもよさうやめてやまぬがいものみち
うめぼしのやうなおなぢもそのまへかたははなをさかせしすひのはて」(七オ)
さく丸撰」(七ウ)


八 『浮礼歌花比(よしこのはなくらべ)』(幕末刊か)

浮礼歌花比(よしこのはなくらべ) 三編」(表紙)
楊柳園大人撰」(見返し)
  序
水結んで雪となり六の花を顕し下手執行して上手となり名吟を作しいかでか雨露の枯樹に花を咲すことあたはんやと益積功を勧めるものは
     楊柳園
 嘉永六年大呂」(序オ)
(絵)」(序ウ)
(絵)貞信」(一オ)
気色もかへられ寝に来た鳥もあきれ顔なる雪の松(白燕)
風のたよりも聞のはいやとへだつ思の冬ごもり(柳糸)
梅もずはへを成丈のばし添てほしさの月を待(梅蔭)
世間はれたらおもひの侭としばし我身を忍ぶ月(花流)」(一ウ)
からみゐたのもはやしめ明と抜てわかるゝ松と竹(弄撰)
のいた当座は気も落付ずうつゝぐらしの狐つき(露蝶)
すかぬ葉がりをする植木やとうらむ鋏にまとふ蔦(貴?)
是非に及ばず別れたけれどにごり持たる雪解水(双蝶)」(二オ)
濡たばかりで気にたらぬやら岩と氷がへばり付(一思)
末は月そふ身を今更と引ぬ小松が日にしほれ(水?)
月と守らんみさをの松に雪がうは気をあぶせかけ(笑雀)
夢になりとのねがひも遂ずゆめは我身の夢ながら(和火)」(二ウ)
風のなさけに吹よせられてよるべ定まる塵とちり(河内井蛙)
迚もかくせぬ色あらはしてぱつとうき名を立る虹(却来)
にくや大事の人引かけてどこへゐたやらしれぬ鷲(万丸)
つもる思がもふたまり兼庭へずり込家根の雪(逸外)」(三オ)
鴛(おし)が気まゝな事するゆへに池もこほりと張つめる(露蝶)
思がけなく裙まくられて風のかるさが恥かしゐ(却来)
高ふとまれど世間の義りでくどき落たる米相場(南英)
抜つくゞりつ田を忍び出草にうは気をするいなご(万丸)」(三ウ)
忍ぶすがたをちらりと見られ月をうらんだ郭公(舞雪)
ほんにとがない柱にもたれじれたそぶりをこすり付(淀文枝)
しめてからんでしつかり抱てゆすり上たる米だわら(備前集丸)
もはや朝日がさし出るゆへに陰でぜひなくつもる雪(山雀)」(四オ)
つくり直した?へおしたてがべつに能(よく)なるはがり松(万丸)
和歌に事よせ送りし文のつらや返事がかたを波(林馬)
鬼と名がつきや瓦のおにもにくや中きに凧の糸(亀照)
先のやうすがどふやらよくてこゝろ嬉しいさら暦(都来)」(四ウ)
忍ぶ恋路をおもはぬ蜘がひどく悋気の網をはる(笑雀)
心づくしをしらぬ火ゆへにもゆる思のはてしない(我丈)
ふられ照され其身の果は破れかぶれの雨障子(竹雪)
残る薫にあの鶯がみれんかけたる梅の枝(青一)」(五オ)
結び合ては又わかれたり風を苦にする女郎花(舞雪)
かたい氷も朝日がそへば解てくるやらわれて来る(笑雀)
君がこゝろの霞ヶ関をしらぬ思に朝ぼらけ(淀紫好)
恋の種おばつゐ蒔初て今は互に咲す花(なのは)」(五ウ)
露は一夜のなさけとしらず濡に出て来る蝶も有(一思)
つもる雪には弐の足ふんで忍びかねたる下駄の跡(六雀)
あれさ見やんせ紅葉の色におもひ染たかからむ蔦(翫雪)
尻もすはらず一夜さあはにやさらにもゝ夜のこゝちする(玉水)」(六オ)
垣をへだてゝ降つむ雪も解りやひとつに成わいな(五?)
寝顔のぞいてまた空ながめ月もかはらぬものならば(半水)
腹の中まで見すかしながら秋も捨おく竹婦人(児門)
今宵逢坂こゝろが関路手形なけねばそつと抜(梅民)」(六ウ)
梅にうぐひす柳にうらみはねて葉先が邪魔をする(?人)
とんで身がるく越行蝶をおもやくやしい垣一重(舞雪)
あへば互に顔見合して塵をむすぶが相撲とり(貴水)
礼義たつ春気もあら玉の花はこゝろの内で咲(菊録)」(七オ)
根から葉迄もきかねばならぬ近所まで蒔修羅の種(河内喜来)
むりな思をかけつぎ針に忍び/\のかくし縫(江辺)
水の出ばなの二人が中はひとめつゝみもきれかゝる(?丸)
かうなれば堀も人めもいらざる草でつもり/\し雪の中(花人)」(七ウ)
あなた計へ日影はさしてつらやこなたは片時雨(五橋)
よその花じやとおもふて見ればひよんな心が出るわいな(雪鵞)
せまく楽しむ小窓の月も照すまことが有ゆへに(定丸)
つもり兼たるまだ初雪はさはる手先につい解る(小団)」(八オ)
来ぬと定て妻戸を〆りや落ぬころゝ(ママ)に又まよひ(五橋)
日々におもひが増わくら葉の色に出たる気あつかひ(亀寿)
みゑつかくれつ雨夜のほたる濡のますほど身をこがす(万丸)
逢た時こそ笠ぬぐ恋よ袖の時雨がはれた夜は(菊詠)」(八ウ)
だますつもりで来る妖(ばけ)ものに客は二階でろくろ首(河内喜来)
千代もかはらぬ色とはきけど遂てそはれん松の雪(梅丸)
ほとゝぎすよりうぐひすよりも外にきゝたい声がある(桃人)
向ふ見ずめが燕の留主にしだれ柳へくらひ付(万丸)」(九オ)
深き沼ある事とはしらずまねく薄にはまり込(五橋)
味なはなしが障子をもると風も穴からりんきする(逸外)
ぽんとけられちやその顔つきもしばしふくれただん鞠場(六雀)
目角月夜に忍びもならずしらけながらにとぶ蛍(白燕)」(九ウ)
松のすげないこゝろとしらずゑがほつくつてずかる藤(竹雪)
かたい花迄つゐそゝなかし蝶のうは気をみせる風(逸外)
横に深入する山鳥は道もまよひの朝の霧(貴翠)
たまの逢瀬を早かへらふと聞もにくげな鹿の声(蔦丸)」(十オ)
うつり替るは世に有ならひいとゞうき身な水の月(莨花)
とけて仕舞にやいなしはせぬと妻戸とぢたる六の花(綾丸)
情しらずに戸を立られて軒にうろつく夕つばめ(都来)
まこと無とはあの胴欲な主の舌さへ弐枚ある(大和山助)」(十ウ)
かうも苦労に成もの迚はしらず教し石たゝき(京東舟)
忍び逢夜にこゝろがあらばあちら向んせお月さま(梅枝)
花のかたきとおもふた風をすゞみ床机に待わびる(梅陰)
たまに顔見せつい其まゝに座付ばかりで気がもめる(五橋)」(十一オ)
逢は玉川口舌が過て秋がきぬたの打たゝき(桃人)
せめて一声忍びねなりと聞をこがれたほとゝぎす(第草)
花はしほれてあしたを恨み咲ばやつるゝ事ばかり(梅園)
風がしやらつきやふるふてゐたに今はからんでねたる草(半水)」(十一ウ)
いやな蜂じやと袖うち払ひ逃りやにげるで追て来る(都来)
月にむら雲花にはあらしとかくあんじる主の沙汰(林馬)
水にせかれてはなれてゐれどつなぎ合たる佐のゝ橋(綾丸)
松の色じやと互にかげでもつれあふたる藤と蔦(万丸)」(十二オ)
おなじ思かこのあさがほをつらゐ朝日にしかみ顔(桃人)
染ぬ松にも氷柱とまでに成てすがりし冬の雨(莨花)
やつれ姿の柳を見ては雪もきへたいおもひぶり(花流)
踊りまぎれに抜ても来たが忍ぶ影なき軒の月(都来)」(十二ウ)
よれつもつれつする日はあれどきれるあんじのない柳(笑雀)
月のそふ樹も数あるけれど中でとりわけ松がよい(翠香)
あたり次第にうつろふ月と水も氷でかたく成(児門)
当座ながらも虫ゆくないか色にかこふて置すもゝ(万丸)」(十三オ)
田から行のも畦からゆくもおなじふみこむ恋の道(春翠)
枝と添寝に来る鳥さへもそぶり不足かとまりかへ(三枝)
雪も程よく積れば庭の樹木がやつれも苦にならぬ(露蝶)
ふるもすねるも柳の意き地なびかそふとて通ふ風(梅雪)」(十三ウ)
更て待夜に灰かきならしともに火鉢の火もしよげる(林馬)
程のやさしい手に握られて肌にするよるぬか袋(都来)
沖に深しい訳あるゆへと碇(いかり)おろして待た舟(花流)
春に逢とて色めく梅にほふかい悋気がつもる雪(児丸)」(十四オ)
かぶせ懸たる雪には竹も直なこゝろを曲かける(梅陰)
いづれやつるゝ身と知ながら梅の小枝につもる雪(青一)
  追加
積りちがひとうかめた顔で雪をすげなくはらふ鳥(粂児)」(十四ウ)
花洛
三条寺町  丸屋善兵衛
二条東洞院 田中屋治輔
新町魚之棚 丁子屋嘉輔
浪花
心斎橋通北久宝寺町 敦賀屋彦七
同本町       河内屋和輔
堺筋通清水町    伊予屋善兵衛」(裏見返し)


九 『たゝみざん辻占詩入都々いつ』(明治初期刊か)

たゝみさん辻占詩入都々いつ」(表紙)
吾妻をと子撰
おう亭ゑがく」(見返し)
都々逸へ詩(からうた)を雑へ唄ふ事行はれ窓行(ぞめき)の通客が美音夜はさらに昼もまた街衢(ちまた)の辻に喧(かまびす)し故にその唄ひ歩行(あるく)詩入とゞ逸の文句を直に辻占の種となし、此書の第三編と做し先序文をヲヤ/\さうです歟
     吾妻雄兎子述

   ○たゝみざんつぢうらの見やう
このうらないのみやうはたゝみの上へかんざしにしてもなにゝてもなげいだしそのなげたるものゝ先のかたのあたりたるすぢより一トすぢ二たすぢとかぞへ十にてとまれば第十又廿にてとまれば第二十のどゝ一とわきの小がきのもんくをもつてそのよしあしをうらなへばいかなるむづかしきことゝいへどもあたらずといふことなしゆめ/\うたがふべからず」(一オ)
第一 ○あんたいなものサ
風にたなびくにしきのみはた〔英雄旗下幾英雄野戦攻城敢道功〕じつにいさましみ代はじめ」(一ウ)
第二 ○いまにいゝひよりになるヨ
しめりがちだよわたしの袖は〔黄梅時節家々雨青草池塘処々蛙〕ないてくらすをみえらしく」(二オ)
第三 ○うかれすぎちやアわるいと
ふんどしよ売ても一合かひな〔春宵一刻価千金花有清香月有陰〕これじや飲ずにや居られない」(二ウ)
第四 ○ちつとはさはりのあるものサ
なみの音聞がいやさに山家のすま居〔独木為橋過小村幾竿修竹護柴門〕それさへやつぱりまつのこゑ」(三オ)
第五 ○このせつのくせだアね
かねは上野かまたあさくさか〔山回緑柳常含雨天為紅桃不放霞〕今日もあさから薄ぐもり」(三ウ)
第六 ○もうちつとのしんぼうサ
まつは憂いとはけふ日のこの身〔傷心欲問前朝事唯有江流去不回〕どこへふけたかうちの人」(四オ)
第七 ○きついうちこみやうだねへ
貴身とふたりで世帯(しよたい)をもてば〔編茅為屋竹為椽屋上青山屋下泉〕どんなすま居も苦にはせぬ」(四ウ)
第八 ○むかしかたぎがよいとサ
たとへもゝとせあはづに居ても〔心如金石志似松●〕みさをのかた意地たてとほす」(五オ)
第九 ○まことにあんしんだヨ
あんじるやさきへ便りときいて〔一接家書意便歓外封先已〕すこしおち着むなさはぎ」(五ウ)
第十 ○くよ/\おしでないとサ
つのる恋路をやまひにかづけ〔約臂銀環寛一寸逢人猶道不相思〕しらぬふりして居るつらさ」(六オ)
第十一 ○ぬぐのはこれからおよしなさいよ
酒はさめるし夜は明かゝり〔鶏声茅店月人跡板橋霜〕ほねへ寒さがしみとほる」(六ウ)


十 『五色染詩入紋句 三編』(明治三年刊。伊勢屋庄之助板)

唐詩流行
五色染詩入紋句 三編
東京 松延堂
翻蝶閑人作」(見返し)
紺屋は所謂水物ながら日限をいとはず天日で乾ば自然と上りも宜とはいへど雨天つゞきに急仕事炭火であぶらば斑が出来形のはげさへ悪しとかや今この五色染てふは唯早染を旨として例の炭火で焙が如き急ぎ物故校合の下染さへも見ざるから注文書とはちがひもあらんが上仕事にて直すの間もなく唯●が侭に仕立へまはしぬ
翻蝶舎主人記」(一オ)
(絵)」(一ウ)
(絵)」(二オ)
なるもならぬもおまへのうでよ〔成陰結実君自取若問傍人那得知〕とりもちなんぞがいるものか」(二ウ)
なみだふき/\ねがほをのぞき〔(こはいろ)このまアやつれさんしたことはいのう 合方「きのふのふちはけふのせと(こはいろ)いかにかはるがならひぢやとておもひいだせばこぞのはる(義太夫)もゝのせつくやにはかのとき仲の町へ出てゐても(ひとよあくれば)花のさかりはうめやしき(せきの戸)今はそれにはひきかへて(女調)よふ/\かくしてよんだのにそんなにねられちやアわたしやうまらないよ(カネ)ゴン引(女)ヲヤあのかねは(小いな)やつか(先代はぎ)七ツ八ツからかなやまへ〕とむねつきだすあけのかね」(三オ)
ぐにつかぬことだけれどもふだんがふだん〔(くぜつして)くぜつしておもはせぶりなそらねいり(とみ本あさま)せなかそむけて物いはぬ(一中ぶし吉原八景)あらしははれてひとしぐれ(りんきらしいが)しからしやんすなわしぢやとて〕なんのいひたいことはない」(三ウ)
青葉がくれになくほとゝぎす〔風吹枯木晴天雨月照平砂夏夜霜〕月がないたかくもの中」(四オ)
きやくをねかしてざしきをぬけて〔冷然夜遂深白露沾人袂〕とりのなくまでなきあかす」(四ウ)
梅のはやしのかほりをたづね〔(わがもの)恋のおもにをかたにかけ(きよ元おかる)ほんのたびねのかり(うばたま)まくらことばぢや(冨本なるかみ)なかぬ日とては一日へんしもないはいな(めぐる日)さゝなきかけるうぐひすの〕こゑをたよりに四畳半」(五オ)
卯月なかばにはこねのゆばで〔(?)山ほとゝぎすてつぺんかけて(はなし)ヱヽかうはつねきける/\だぜあをばがくれにほとゝぎすとはコイツハうけやしたトキニめづらしいものがゆへきているぜ「だれだ「ナニ義太夫のさみせんよ「せい八かせんざへもんか「イヽヤひきてぢやアねへふとざほよ「ナニ三みせんかはてなだうぐのたうぢとはめうだ「さうよあんまりふしぎだからきゝやした「なんといつたへ〕さほがいたんでこまります」(五ウ)
ときはあはせの身がるのころに〔独騎善馬●鐙穏初着単衣支体軽〕わたしや身おもでうきくらう」(六オ)
ふたりくらさばみやまのすまい〔古木寒鳥啼空山啼夜猿〕しばかるてわざもいとやせぬ」(六ウ)
ぐちもじやすいもほれたがわるい〔(一中くらべぼたん)あめのよゆきやかぜのよもかよひくらべにまけまじと(とみ本長生)むすぶゑにしのいもとせもいのちながかけもろしらが(けさのあめ)アレねなんすかおきなんし(清元ごん八)なさけはうれど心までうらぬわたしがくがいのまこと(げん太)まくらの下へやる手さへ〕つとめにはなればからしい」(七オ)
ゑにもかゝれぬたそがれげしき〔(夕ぐれ)ながめ見あかぬすみだ川月にふぜいをまつち山ほかけたふねが見ゆるぞへ〕さくらまばゆきなかの町」(七ウ)
てがらがましくいふではないが〔人生感意気功名誰復論〕みんなおまへのためぢやもの」(八オ)
こゝにかうしてのがれてゐるも〔今我遊冥冥弋者何所慕〕ふぎりふせぎとおんなよけ」(八ウ)
たよりぐらいはできそなものと〔(はぎきゝやう)ふけゆくかねにかりのこゑ(清元落人)まだはださむきはるかぜに(ひとこゑ)つきがないたかほとゝぎす〕かこちなみだにぐちばかり」(九オ)
とりとめたこともないのにゑにゑをすげて〔(むつとして)かへればかどのあをやぎにくもりしむねをはるさめに(けさのあめ)またゐつゞけになが日をみぢかふくらすとこのうち〕これにやおほかたわけがあろ」(九ウ)
こまがたあたりとたか尾はいへど〔秋風吹不尽総是玉関情〕ぬしはいまごろもどツたか」(十オ)
くるわぜんせいものいふ花を〔(芝翫けいせい)こひといふもじのすがたをはんじものとけておもひのたねとなる(一中くらべぼたん)かゝるこひぢもおぼつかなむねにうかべるあだことをおもふまもなくゆくみづのふかあみがさやからかさをひらくうの花ころもがへ(こはいろ)くらべぼたんのふうぞくは「したやうへのゝ山かつら「にしにふじがね「きたにつくば「おもひくらべ?「だてこそで(富本長せい)あだといろとをこひむらさきのつゞやはたちはいろざかり(めぐる日)かほはゆかしとまちわびかねて〕ねこしてうゑしなかの町」(十一ウ)
国へゆかずと一ト花さかせ〔君言不得意帰臥南山陸〕人を見かへす気になりな」(十二オ)
おがひてさきもせんじゆにみゆる〔一群嬌鳥共啼花啼花戯蝶千門側〕くわんおんさつたのおかいちやう」(十二ウ)
きをもむまいとはおもふてゐれど〔(かつら川)うはさにもきだてがよふてなりふりまでも(山がへり)すいたらしいと思ふたがいんぐわなゑんのいとぐるま(おきてみつ)かやのひろさにたゞひとり〕うはきがつのればきがかはる」(十三オ)
ふとんしきたへまくらのびやうぶ〔(とみ本すまふ)きみにおほぜきあふよをたより人目せきわきいとふてもふたりが中へ小むすびのやくそくかたきいはたおび〕もゝ手をつくしてこひずまふ」(十三ウ)
いちどあふたらいのちもいらぬ〔得成比目何辞死願作鴛鴦不羨仙〕たなばたさんでもわしにやまし」(十四オ)
ふるゆきをふむもおしいがふまずばひとが〔銀河沙漲三千界梅嶺花開一万株〕とふてくれまいこのけしき」(十四ウ)
人がほめればついきがまはり〔(はぎきゝやう)きみを松むしよごとにすだく(うそとまこと)だまされぬきでだまされて(清元)もしやとおもふこけみれん(わかのうら)もんじゆさんはよけれどもきれるといふじがきにかゝる〕見すてらりよかとあんじられ」(十五オ)
つとめする身でまことをあかし〔(とみ本???)水ももらさぬあまの川それもおよばぬねこ?ながら(かは竹)なかにたつとりすご/\とわかれのつらさにそでしぼる〕そはざやむまいこのくらう
やくやもしほもたのみにやならぬ〔(ひとこゑ)いつしかしらむみぢかよにまだねもやらぬたまくらに(清元おちうど)かはい/\のめうとづれ〕からすにざこねをおこされる」(十五ウ)
つきをともとてなくむしのねは〔沙頭雨染班々草面風駈瑟々波〕はぎの下つゆぬれたどし」(十六オ)
おまへのいふことわしやまにうけて〔(ことば)そのやさしいことばにまよつて(ひとこと)ひとことがとことにむかふうれしさに(ことば)どうしてこれが「わすらりよものかわすられぬ(ことば)つみがねへ「うそにもほれたをじつにして〕すゑのくゝりをむねの内」(十七ウ)
となりざしきはちん/\かもで〔比目鴛鴦真可羨双去双来君不見〕こちの女郎はなぜこない」(十八オ)
どこへいつてもおまへのことを〔(宇治は茶所)なかにうはさの大吉山と(ことば)どんなにみんながほめるだらう「人のきにあふ水にあふ(ことば)にくらしいねへ「いろもかもあるすいたどし〕人がほめればきがもめる」(十九ウ)
はるさめに手と手手と手がかさなりまして〔(とみ本長生)おいせぬかどのわか/\とわか水くみのあさわかきおやどのはじめにはかまど(ときはづあはしま)おきまどはせるうたがるた〕こひぞつもりてふちとなる」(二十オ)
おもひきりましよあきらめましよが〔(かれのゆかしき)こゝろもさゆるよはの月(女なる神)さとりすませしこの身にも〕じつにぼんのうにやひかされる」(二十ウ)
(広告)
明治三午年四月
東京 松島町 伊勢屋庄之助板」(裏見返し)


十一 『〔開化芸妓〕端唄浄るり入都々逸』(明治十一年刊)

〔開化芸妓〕端唄浄るり都々逸
幾英画
木楽斎撰
神田 錦林堂梓」(表紙)
金とき替うた(省略)」(一オ)
香水しやぼんのいろ香にまよひ〔(うた沢はうた)やうす売のがおまへの家業〕のつたわたしは開化ぶり」(一ウ)
土手の柳についまねかれて〔霞の衣もえもん坂ゑもんつくろふ初買に花の江戸町京町や背中合せの松ケ枝に松の太夫の見返りは柳桜の仲の町〕恵方参りの道まよひ」(二オ)
もやひつなぎし橋間の小舟〔(常わづまさかど)恋はくせ者世の人の迷ひのふちせきのどくな山よりおちる流れの身うきねの琴のそれならで〕ういたはうたの水調子」(二ウ)
日増に究理は開けるけれど〔(義太夫廿四孝)回向しよとてお姿を写しとらせはせぬものをだましてござる官員さん名家の血筋あるならばかへるとたつた一言の〕ものいふ写真がなぜ出来ぬ」(三オ)
女の生徒がうわきななりで〔(ときわづ朝がほ)こがれ初たるかの人とかたらふ間さへ夏の夜の短いちぎりの本意ない別れ所尋るたよりさへ思ふにまかせぬ国の迎ひ〕そつげふせぬ間に返県(きけん)する」(三ウ)
今日は土曜日ところで待て〔(はうた)君来ずは寐やへはいらず柴之戸へ出てはかへり/\ては〕ひとりくよ/\かやの中」(四オ)
目さきに紅葉のあいきやうみせて〔(忠臣蔵二段目ときはづ)小浪ははつと手をつかへじつと見かわす顔とかほ互にむねに恋人と物も言れぬ赤面は梅と桜の花角力〕じつと返事が出来兼る」(四ウ)
上等なおまへに下等のわたし〔(清元とばゑ)どうぞだかれて鼠とはかわらぬ恋の身のねがひ〕中等にへだてがあるわいな」(五オ)
はかま附てもほころびやすい〔(おはん清元)また三味線の手ほどきもおまへにならひ夫からがお師匠さんへ幾田流〕をんな生徒のあだごゝろ」(五ウ)
親ばかちやんりん(省略)」(六オ)
雪は巴の替歌(省略)」(六ウ)
夕ぐれかへうた(省略)」(七オ)
忍ぶ恋路替うた(省略)」(七ウ)
海あん寺替うた(省略)
うきな恋路の替うた(省略)」(八オ)
恋のやみ路に寒さもわすれ〔(詩入のわがもの)我物と思へばかろし傘の雪<北風吹雁雪紛々>かたに掛けいもがり行ば冬の夜も<五心重畳凍相違>〕しのぶたよりの雪明り」(八ウ)
橋間すれ合小舟と小ぶね〔吹よ川風上れよすだれ〕ぬしの恋よとむなさわぎ
うば玉かへうた(省略)」(九オ)
五音都々いつ
たとへ此身はもくづとなるも蓮の台なでアイウエオ
小ぐし取あげ気をとりなをしなみだながらにカキクケコ
いかに若気のいたりぢやとても子迄にかんなんサセスセソ」(九ウ)
前おなじく
水をさしあふ二人の中で恋のいきじをハヒフヘホ
人のこゝろもアノ白糸にむねのほむらがヤイユヱヨ」(十オ)
吸付烟草につゐだまされて己が世帯をけむにする
金の時計が見当じやものを襟に附のはしれた事」(十ウ)
花になびくも世渡り故に東風は三筋の糸やなぎ
松と言字は好るゝはづよ公と木とはさしむかひ」(十一オ)
わるく言りよとおまへとならば出ても嬉しい新聞に
私やくさりのつなぎめ堅く主は時計のくるひがち」(十一ウ)
親が不服で添せぬならば原告弐人で出訴する
車夫のけんくわをはたから見れば〔めつた(金壱朱)〕やたらにふる〔げんこ(五銭)〕」(十二オ)
どふせ切らるゝかくごでしたと惜まず附出すしまだわげ
はなして居たいは山々なれどまたも蒸気の笛がなる」(十二ウ)
思ひがけなく見合す顔をけむにして行汽車のまど
更にせんぎの次第もあれば極(きめ)たせいしはおとりけし」(十三オ)
火事と雷りやきかいで済が防ぐ手立のない地震
おひげ払てらくするよりも女工となつてぬしのそば」(十三ウ)
最早四時かと酒あたゝめて待間ほどなくくつのおと
ひげを延して女猫をじやらししやれりやはなげが又のびる」(十四オ)
二人並んで写した写真切てもみれんで捨られぬ
主に貰ふた片身の写真寐間も放してなるものか」(十四ウ)
猫じや/\とおしやますけれど首尾能いけば二等しん
お金有やこそいやでもなびくくめん出来たらまたおいで」(十五オ)
海山越ても便りは出来る切れちやいやだとでんしんき
人目つゝんで見るちわぶみはねやの小まどの月あかり」(十五ウ)
(広告)
明治十二年五月 日
御届
東京神田区鍛冶町十九番地
編輯出板元 武井佐吉」(裏見返し)


十二 『吉原どゝいつぶし』(明治初期刊)

吉原どゞいつぶし」(表紙)
角にがつとを晦日に月夜文明開化にやみはない」(一オ)
うしろすがたにもしひとよんでかをがちがつてをきのどく
たれをきかせてのろけてにても五分でもすかない人じやもの」(一ウ)
むまれこきやうはわしや万代ばしよきやつとうぶゆはすいどばし
おまへを見初た去年の花見たしかしやつぽにまるばをり」(二オ)
じつがあるなら質種かしなかみにきしやうもうちやいらぬ
あたるむすめのなりひらばしをみせればはなの下日本ばし
はつはたがいにうわきで出来ていまはひとりでじやうをたて」(二ウ)
ゆうべしたせか車がひけぬこしがふら/\あともどり」(三オ)
ぬしと二人りが合のり車ないしやう咄しがいゝかねる」(三ウ)
玉子のいせいで忰がおこりおこつちや車もひきかねる」(四オ)
子僧車でくるしみしやんせしくじりや車でよをわたる」(四ウ)
うつゝごゝろではしらにもたれおきてゐながらぬしの夢(梅ボリ語笑楽)
けふかあすかのかはいゝ中も渕が瀬となる世のならひ(梅ボリ常二)」(五オ)
身にはおひへをまとつてゐてもこゝろに着てゐるあやにしき(梅ボリとく女)
いろのあるのを初手からしればかうしたわけにはならぬもの(梅ボリ横利)」(五ウ)
うはきといはれりや一言もないがおまへに見かへる初手のいろ(梅ボリとく女)
なれないま男ていしのかほに泥のつくはづころぶゆへ(サクラ川薪孝)」(六オ)
屏風ひとへのわり床なればしんのはなしはのこりがち(浅草大工徳)
女房かたぎではなこそさかねじみなみさほは雪の松(梅ボリ唄たね)」(六ウ)
といきつく/\あんじて見ればどうですへにはわかれもの(梅ボリ常二)
せつかくのごしんせつだがまづおことはりさんみやうさがしだゆめにおし(梅ボリ横利)」(七オ)
気やすめ真うけで鼻毛をのばしかはりのできたもしらないで(梅ボリ玉我)
すへもしれないあだ縁むすびうはきどうしの実くらべ(梅ボリ喜三)」(七ウ)
ほれた女房のあるその人になんでこんなにほれたらふ(梅ボリとく女)
さぞやさぞあんじちやゐれどもひとめがあればたよりをせぬのもむりはない」(梅ボリたき女)」(八オ)
とてもあへねばうたゝ寐よひ寐夢であふのをたのしみに(梅ボリたき女)
友だちの亭主にほれてはすまないけれどしあんのほかなら義理もかく(浅草唄女小菊)」(八ウ)
▲丸で壱年たよりもしれず〔(新内)毎日たづぬれどどこにどうしていさんすやら〕しれないはづだよむこと成
▲もふ壱両しあんしかへてあるそつかしをいふも按じるやすだいし
こんなつらにて蚤とりまなこほんにおばけの運上とり」(九オ)
▲ねゐるすがたのかほつく/\とほんにせたいでやつれたか
▲主が来たとてあはてゝかやを出ればあの子にだまされる
▲芋とかぼちやでうき身をやつすまけておくれよ八百やさん」(九ウ)


十三 『(都々一)』(明治初期刊)

伝信機(はりがね)が便りよ為(する)よな開化の世なら写真に苦舌が言せたい
色の世界と言のが無理か五しき色採る万国図」(十一オ)
善も悪きも世間のあらを探して記載(かきだ)す新聞紙
いろはせず京と習つた子でも今じやアイウヱオのサシスセソ」(十一ウ)
おくびに出しても悪いと思や食ぬ顔して知らぬふり
主の此頃顔向せぬは胸に焚火でけむいのか」(十二オ)
過ちや悪いと葡萄酒隠し汲器(こつぷ)とるのも酷(すい)た中
十把束(から)げで転ぶといへば解て見せたい胸のうち」(十二ウ)
姿見に写す笑顔にうつかり見とれぬしの惚しも無理でない
三味線枕にぐと引寄て可愛らしいと抱く小ねこ」(十三オ)
上のお世話の隅々までも届く郵便早便り
乗と曳とのちがひは有ど同じ人民車夫と客」(十三ウ)
義理といふ字に人目をはぢて言たい事さへ胸のうち
親類縁者の異見も聞ず立る意気地の末を見な」(十四オ)
乗せて下して(ママ)乗せて客にせはしき陸娼妓(おかじようき)
神代このかた替らぬものは水の流と恋のみち」(十四ウ)
お前のどれだけ私やこれ丈と思ひちがひに食ちがひ
嬉し涙に白粉はげて素顔見らるゝ恥かしさ」(十五オ)
情ごゝろの種さへ蒔ば何時か真事の花がさく
知れちやならないおまはりさんに速くおやりよ立小便」(十五ウ)
海とも山とも分らぬうちに人が指さす暗射絵図
もう言んすな其気休めを疾に見透す硝子張」(十六オ)
言に言れぬ私が心髪鋏(ざんぎり)天窓(あたま)じやなけれども
口先ばかりで腹へは入ぬ主の浮気は巻煙草」(十六ウ)
ほれたどうしで遂寐過して九時の出仕が遅くなる
意気な姿で迷はす猫は着たる羽織もぎん鼠」(十七オ)
顔は見へてもガラスの硝子(せうじ)内証ばなしが通じない
続く日でりも困りはすれど長い雨にも亦こまる」(十七ウ)
力揃へば踏石さへも揚てゆるがす霜ばしら
ひやかし雀の飛去る跡は赤い仕掛を着た案山子」(十八オ)
遣手の眼玉を蛍と見なし涼しい世界にして見たい
若や夫かと立聞すれば硝子障子で聞とれず」(十八ウ)
写真になるならこゝろの内を主に見せたいこの苦労
羅生門より晦日がこわい鬼が金札とりに来る」(十九オ)
ほつとため息つく/\詠め〔(常は津岩川)江戸なが崎くに/\へゆかしやんした其跡は〕残る写真が癪のたね
末に車を曳うと侭よ引にひかれぬ恋の意地」(十九ウ)
明の鐘の音きゝたくないがコンとなるとはたのもしい
規則で啼のかアノ明がらすたまにや日曜(どんたく)するがよい」(二十オ)
一すぢ縄ではいかない奴が三筋の糸にはしめられる
うそも誠も皆うちあけて?(はな)しや手管とうたぐられ」(二十ウ)


十四 『いなせどゝ一』(明治初期刊)

〔東京〕げいしやいなせどゝ逸」(表紙)
いなせどゝ一」(見返し)
夫江湖上(よのなか)の流行唄は、紫陽花の色の如く、狸ぬの眼の玉に似て、日々に換り、時々に変じ、昨日の文句今日古び、朝の唱歌夕部に送れ往中に、ひとり独々逸のみ、復古の今も廃られず、弥増盛んの流行ツ子、ところを附込ものする気で、急に初編の口をかけ、先序文から斯の如し
   美声散人述」(一オ)
あれ見やしやんせ今朝のゆきつもる咄しもねてとける」(一ウ)
つゝむこゝろを香にしられてや風がみちびく夜のむめ」(二オ)
とかくひと重は花さへ見事つくままつりのなべを見よ」(二ウ)
八重に咲花もあるのに恋路の道は障子ひとゑがまゝならぬ」(三オ)
背に腹かへても今度の事は云ひぜうたてずにおくものか」(三ウ)
もとめてわたしは切よといわぬしかけたけんくわはおまへから」(四オ)
鼠衣と身はさとれどもかけし表具のさくら姫」(四ウ)
ちよきのけんさき北へとむけて鉄も黄金もすひよせる」(五オ)
添れない事と思案にしあんはしてもナゼカ思あんにまたしあん」(五ウ)
あいさそうだよおいひのとふりわたしやおまへにむりばかり」(六オ)
味りんでころりと口まへ上手うかつにやのられぬぬしのくち」(六ウ)
はらじやないても上辺じやわらふつらひつとめの初会ぐち」(七オ)
染色を何にしやうと気をもむ内にはたでくらうをそめさせる」(七ウ)
おまゑの留主にも縫針仕事はやく〆たいうしろ帯」(八オ)
ほうばいにのろけられても取越ぐらうぬしじやないかとさきくゞり」(八ウ)
ぐちツぽく成たとお前はおいひだけれどもしやつのれば気がかはる」(九オ)
玉のこしより味そこしをさげてじみなくらうも得てかつ手」(九ウ)
どふしても落ぬ思あんにふさいでゐれば夫じやわるいとなさけしり」(十オ)
むしをころして聞てはゐれどおまゑがなければ一チかばち」(十ウ)
不甲斐ないぞへふさぐなおよし春は木ずゑも花がさく」(十一オ)
云ふに落ずにかたるにおちていつかみんなになぶられる」(十一ウ)
すゑをたのみに呼ずにゐればはたじやさめたとたきつける」(十二オ)
人のうは気を笑つたわたしどふしてこんなになつたやら」(十二ウ)
春の夜かぜに梅が香はこぶこゝろとゞいた四畳半」(十三オ)
雪の降る夜もなに寒からうふすまかさねし暖(ぬく)め鳥」(十三ウ)
手宛上手につひだまされていつか綻ぶむめの花」(十四オ)
梅の笑がほにさくらの媚に山吹ヤ咲ても実がならぬ」(十四ウ)
恵方まいりの三人一座ふいと名ざしの初会ぐち」(十五オ)
血みちを上ゲてもぬしある花はどふせもと木へかへりざき」(十五ウ)
梅にうぐひす柳に乙鳥わたしやおまへにつきまとふ」(十六オ)
こゝろづくしのもとはといへば思ひすぎ菜のはじめから」(十六ウ)
春の夜ながらもうひけすぎてすゑをかこちて啼蛙」(十七オ)
吹よ川かぜ夜はしん/\とはるのおぼろのおくりぶね」(十七ウ)
ほれりやうたぐるうたぐりやけんくわあとじやおまへにくるめられ」(十八オ)
とゞく小枝を見むきもせずにおよばぬこずえでくらうする」(十八ウ)
かんしやくおさへて呑冷ざけはじつにやまひの種おろし」(十九オ)
春の雨夜に気のあひどしでゑんをつなひだ歌がるた」(十九ウ)


十五 『当世都々一真盛』(明治初期刊か)

当世都々一真盛
豊原周春筆
延寿堂梓」(表紙)
周春ゑがく
まる鉄はん」(見返し)
かうしてさうしてまたあゝしてと〔(冨本三かつ)あけくれおもうていまするときいてとびたつうれしさにてをあわすればそのてをとり〕すへにやどふとかする積り」(一オ)
今じや出雲の国より恵比寿〔(長うた鷺娘)ゑんを結ぶのかみさんにとりあげられし嬉しさも〕佐渡の土よりぼろのかみ」(一ウ)
そばへより添袖ひきとめて〔(一中ぶしゑのしま)おもわせぶりは誰やらが?ひの心をうつせがゐ〕今ばんいかゞとぬかすばゝ」(二オ)
浮たどふしと言われるはづよ〔(ときわづ三ツ△)そもやうきねの初めよりみのうへしらずきもしらず浮気どふしの中かゐな〕流燈会から出来た中」(二ウ)
小皺のよるまで三すじの糸で〔(冨本おちよ)目もとしぼよるちりめんのふたへまわりのかゝへおび〕苦労するのも親の罰」(三オ)
雪と名をかへ氷でさへも〔(常はづかつら川)はづかしいこといわはしのよるの契りも仇まくら〕二度の勤めに身を削る」(三ウ)
死ぬる活るの咄のなかば〔(一中小はる)しよせんこのよはかりわけのこいにうきみをなげしまだ〕コクリ/\と舟をこぐ」(四オ)
巨燵に当りてざこ寝をすれば〔(常盤津うとふ)さすがいわきにあらざればすてゝもおかず〕はじめ手とてが足とあし」(四ウ)
娼妓芸妓をころばしすぎて〔(うた沢ひと言)わすらりよものかわすられぬ嘘にもいふたを実にして〕今じや自分の身がたゝぬ」(五オ)
おかやきするのか月夜のからす〔(清元落人)かあゐ/\のめうとづれさきはいそげどこゝろはあとへ〕明もせぬのに憎らしゐ」(五ウ)
添ふて苦労は覚悟だけれど〔(上るり太功記十だんめ)こんなとのごをもちながら〕添わぬ先からこのくろふ」(六オ)
実がなゐからおまへのさけをにくまれ/\とめはせぬ」(六ウ)
君とかわした指輪をはめて〔(うた沢ほんに思へば)ひとのそしりも世の義理も思わぬこいの三ツせがわ〕さすが気がねは親の前」(七オ)
甲夜にや粘着乙夜に凝集〔(とみもと)かわす詞のは睦まじくありしそいねのいもせがわうき世をわたる花いかだ〕明けりや分解するわいな」(七ウ)
中が宜すぎて口舌がこふじ〔(上るり白木や)そりやきこへませぬ才三さんおまへとわたしがそのなかはきのふやけふのことかいな〕泣て見せたり笑つたり」(八オ)
こゐに上下のへだてはないといふはまことじやみな苦才」(八ウ)
親のゆるさぬ不儀いたづらで叩き出された木魚講」(九オ)
地球儀に似た西瓜を断(き)りて二人まゐとはよゐ世界」(九ウ)
猫と名が付きや言わづと知れる〔(清元小ぎく)しかもそのときこのうちでぬしにはじめてあいのても〕ひくと乗せるが身のつとめ」(十オ)
十里廿里へだてゝ居ても汽車で通へば瞬時間」(十ウ)
いくら鰌に滅金をしても〔(一中ぶしよし原八景)にほのうきねのみながらもあだにあわづのせいらんと心でとめしいつゞけに〕どこの鯰にや見へかねる」(十一オ)
恥かしさ恐さふたつと一ツの夜着へ袖を比よくの新枕」(十一ウ)
恵比寿の利益で近ごろ布袋〔(上るりすしや)くもいにちかきおんかたに〕心当りが二三人」(十二オ)
遠ざかつたは世間の手まへ〔(清元うら里)あふた初手からかわゐさが身にしみ/\とほれぬいて〕などゝ其場の間に合せ」(十二ウ)
寐ては考へおきては思案〔互ひに胸をうちあけて気もあゐぼれのすゐたど)〕どうも忰れの気が知れぬ」(十三オ)
こゝろつくしに袴をとらせぬれて嬉しゐ春の雨」(十三ウ)
旨くいふびん空言かきならべ〔(一中あさま)千も二千も三千もせかゐにひとりの男じやと〕おだて文句の無心状」(十四オ)
野暮と笑うなあのあを梅はすゐが凝(こう)じてみをおとす」(十四ウ)
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東京 日本橋通三丁目十三番地
丸屋 小林鉄次郎板」(裏見返し)


十六 『漢語都々逸』

漢語都々一 弐編
貞信画
大阪綿喜梓」(表紙)
狂句
外題 貞信筆
浪花金随堂板」(見返し)
  ○漢語百々逸ノ部
よしや交誼は立ずとまゝよぬしの偉烈(いれつ/すぐれてつよき)を他よりも」(一オ)
それと事状(じじやう/ことのしだい)はまだ聞ね?顕然(げんぜん/あきらかなことば)お前の素振では」(一ウ)
あれほど必然(ひつぜん/きつとしたこと)した其ことをまたも変革(へんかく/あらためてかはること)しやさんす」(二オ)
人眼潜行(せんかう/しのんでゆく)して逢なかをにくや失策(しつさく/やりそこない)さゝれては」(二ウ)
せめて一旦(いつたん/ひとあさ)気をいれかへて常の隔心(かくしん/へだてごゝろ)やめさんせ」(三オ)
熟慮(じゆくりよ/よく/\かんがへること)して見りやなほさら主のことばに感銘(かんめい/ふかくよろこびわすれぬこと)するばかり」(三ウ)
すへのやくそく堅確(けんかく/かたくしつかりしたこと)とつてぬしの仁慮(じんりよ/じひなおぼしめし)をまつばかり」(四オ)
わたしがいふこと主や尾撃(びげき/しりへをうつこと)していつか応戦(おうせん/こちらからもたゝかふ)やみはせぬ」(四ウ)
よしやおまへの国情(こくじやう/くにぢうのこゝろ)にせよ無理な応酬(おうしう/へんとう)できはせぬ」(五オ)
いやよおまへの労詞(ろうし/ねぎらひことば)をやめて実な就約(じうやく/やくそくきまる)しやさんせ」(五ウ)
愚論(ぐろん/おろかなろん)俗論(ぞくろん/いやしきろん)モフやめにして真実応接(おゝせつ/おゝたい)きめてほし」(六オ)
おなごの微力(びりよく/すこしのちから)主や気づよくもふりきりいなんす遺憾(ゐかん/ざんねん)さは」(六ウ)
アレまたさんせと憤発(ふんぱつ/げんきをいだす)してもにくや疑心(ぎしん/うたがひごゝろ)にいぬる気持」(七オ)
それとこゝろで垂察(すいさつ/すいりやう)すればまたも造言(ざうげん/つくりことば)仕やさんす」(七ウ)
きめた約誓(やくせい/ちかひ)ちがはぬやうにしかと答論(とうろん/ろんをこたへる)仕やさんせ」(九オ)
うそのかづ/\発炮(はつぽう/はなつてつぽう)せずに実も発表(はつぴやう/あらはし)してほしひ」(九ウ)
慰労(?ろう/つかれをなぐさむ)さゝんす気は嬉しひかしん実篤志(とくし/あつきこゝろざし)は余所へして」(十オ)
  ○英語百々逸部
口舌しながら寐ヱール(ゑいる/る気)が出たてテール(ている/なみだ)の中から出る笑がほ」(十ウ)
ナイルデ(ないるで/夜る昼る)心に逢つめながらカシル(かしる/当座)かつたよ逢夜さを」(十一オ)
びつくりしたナイ(ない/夜に)気がどきつくよ思はずラープ(らあぷ/うれし)といふてから」(十一ウ)
このモルニング(もるにんぐ/あさがらす)のからすを夜るとスリトプ(すりとぶ/寐すご)さしたようれしさに」(十三オ)
フヱース(ふゑいす/かほも)見られずモフこ?ころはラープ(らあぷ/うれし)い夢にも遠座かり」(十三ウ)
ニー(にひ/ひざ)にウオンナイ(うをんなひ/ひと夜さ)と置なみださへいく夜さ私しのスリフ(すりふ/そでに)とめ」(十五オ)
ラープ(らふぷ/うれし)とおもふて苦をすればこそアイ(あい/目に)立リンリ(りんり/ほそ)に気もつかず」(十五ウ)
(広告)
絵双紙仕入処  大坂心斎橋塩町角
        綿喜事 前田喜兵衛
団扇仕入処   同平野町心斎橋西入北側
        同支店
新板珍書発兌所 同北堀江市場北入東側
        同支店」(裏見返し)


十七 『〔新作〕開化はうた』(明治初期刊。明治十八年以前。頭書部分が都々逸。)

〔新作〕開化はうた」(表紙)
 とゝ一
烏サうたれる時計は狂うくふ主と同寐を正午まで
 仝
松といふ字は開化の文字よ君にわかれりや木ばかり」(見返し)
 都々逸
水がげんさへ人手はいらぬほんに開(ひらけ)た御ぜんさま
 おなじく
猫はげいぎに娼妓はきつね客は狸のかし座しき」(一オ)
 どゝ一
赤い仕かけにふたりが中をつなぎとめたるくさり縁
 おなじく
わたしや流れの隅田の燈籠ぬしを待乳の片明り」(一ウ)
 都々一
はがきゆうびんやりとりしたがいまはたがひの元封じ
 おなじく
きれてくやしいおもひもきうにさきへとゞかぬでんしんき」(二オ)
 どゞ逸
けむとしりつゝこゝろのあさま口のはにのる巻たばこ
 仝
かたく育て箱入ものをたれにとかるゝなつ氷」(二ウ)
 どゝ一
ひまなからだではもみがゝずにわたしやよふじがないわいな
 仝
うわき鶯もと木をわすれとなりあるきの桃のはな」(三オ)
 どゞいつ
てんじよふの月を見せたる丸あんどうもびようぶひとへが恋の闇
 おなじく
根ごしさくらもきまゝにさかせいます小とりもはなしがひ」(三ウ)
 都々一
じやれつく手くだはそのふところを見ぬく時計のりようがらす
 おなじく
おやじのらんぷは開化にくらしよくに手ををく米会社」(四オ)
 どゞ一
にはの蛍とごんさいさんはよるのつとめの身の光り
 おなじく
はいすかたなは開化でよいが口でころせばおなじつみ」(四ウ)
 都々一
角力じんくでよふ/\客にでるもスツチヤンちやんのため
 仝
はたでわろふがみさほをたてゝ丸いなかじやといわれたい」(五オ)
 どゝ一
ぶんめいととんできた蚊にチクリとさゝれ開化ないかとなでゝ見る
 仝
浮気なお前にくうきをとられ登りつめたるゴムの玉」(五ウ)
 都々一
風りんのおとにふとめをうたゝ寐まくら月にはづかしみだれがみ
 仝
うそをいうのもくるわのならひすへのまことをおみなへし」(六オ)
 どゝ一
ちわがこうじてあら立波も花にあらしのはなれ鴦(おし)
 仝
のぼりつめたるあの皐月鯉?に逢ずに風まかせ」(六ウ)
 都々一
はな毛のばした昔にかわりおひげ延した人がよい
 仝
公債証書とあの水すましほそくも長くあしがある」(七オ)