圓朝作品の挿絵
出口智之は、「明治期『読売新聞』の挿絵改革」(『国語と国文学』第千二百三十二号。令和八年七月)において、
(注:明治三十年)九月一日には、早くも三遊亭円朝口演・酒井昇造速記・挿絵無署名「雨後の残月」が開始している。〈中略〉
かくしてはじまった「雨後の残月」は、九月二十九日掲載の第五席の七で完結し、続いて十月三日から十一月十九日まで、おなじく円朝の「応文一雅の伝」が掲載された。いずれの挿絵も落款がなく、「円朝全集」第十三巻(岩波書店、平成二十六年十一月)の「後記」でも絵師不明とされているものの、歌川派の筆法を見せる手慣れた筆で、古洞の伝えるとおり水野年方と考えて不自然はない。
と述べている。絵師解明はありがたいが、「円朝全集」巻数に誤りがある。「第十三巻」ではなく、「第十一巻」である。同巻「後記(雨後の残月)」には、「挿絵の絵師は、落款がなく不明」とあり、「後記(応文一雅伝)」には、「絵師は未詳」とある。
『雨後の残月』『応文一雅伝』両作の挿絵は、出口の言うとおり、水野年方で間違いないであろう。
* * *
以下、『円朝全集』「後記」によって、圓朝作品の挿絵画家を確認しておく。
『円朝全集』第一巻
怪談牡丹燈籠…… 亭斎年参(進斎年光)
塩原多助一代記…… 朝霞楼芳幾(歌川芳幾)、梅蝶国峯(歌川国峰)
鏡ヶ池操松影…… 朝霞楼芳幾(歌川芳幾)、朝香楼芳春(歌川芳春)、小山光方
『円朝全集』第二巻
西洋人情話英国孝子ジョージスミス之伝…… 梅蝶楼国峯(歌川国峰)、歌川国久
安中草三伝後開榛名の梅が香…… 朝香楼芳春(歌川芳春)、大蘇芳年、等々
『円朝全集』第三巻
業平文治漂流奇談…… 陽斎年貞、楊洲周延、守川周重
松の操美人の生埋…… 大蘇芳年、水野年方
蝦夷錦古郷の家土産…… 大蘇芳年、水野年方
『円朝全集』第四巻
欧州小説 黄薔薇…… 落合芳幾(歌川芳幾)
鶴殺疾刄庖刀…… 大蘇芳年、水野年方
月に謡荻江の一節 一名荻江の伝…… 大蘇芳年
『円朝全集』第五巻
敵討札所の霊験…… 大蘇芳年
真景累が淵…… 大蘇芳年
『円朝全集』第六巻
怪談乳房榎…… 落合芳幾(歌川芳幾)
緑林門松竹…… 〈絵師について記述なし〉
操競女学校…… 水野年方
『円朝全集』第七巻
粟田口霑笛竹…… 大蘇芳年
文七元結…… 大蘇芳年
福禄寿…… 大蘇芳年
『円朝全集』第八巻
熱海土産温泉利書…… 大蘇芳年
霧隠伊香保湯煙…… 大蘇芳年
松と藤芸妓の替紋…… 水野年方、尾形月耕
『円朝全集』第九巻
荻の若葉…… 藤原信一
雨夜の引窓…… 後藤芳景
菊模様皿山奇談…… 大蘇芳年
『円朝全集』第十巻
名人競…… 水野年方
八景隅田川…… 水野年方
政談月の鏡…… 水野年方
名人長二…… 水野年方
『円朝全集』第十一巻
蝦夷訛…… 水野年方
日蓮大士道徳話…… 〈挿絵なし〉
雨後の残月…… 水野年方(出口智之による)
応文一雅伝…… 水野年方(出口智之による)
離魂病 一名因果塚の由来…… 率真
『円朝全集』第十二巻
火中の蓮華…… 水野年方、鏑木清方
谷文晃の伝…… 〈挿絵なし〉
闇夜の梅…… 落合芳幾(歌川芳幾)〈口絵のみ〉
奴勝山…… 〈絵師について記述なし〉
塩原多助後日譚…… 水野年方、鏑木清方
怪談阿三の森…… 〈挿絵なし〉
心中時雨傘…… 芳麿〈口絵のみ〉
『円朝全集』第十三巻以下は、省略。
2026年09月07日公開
菊池眞一
菊池眞一
初めに戻る